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Wonderful Woman(火影祭2011参加作品①) [捧げ物]

火影祭2011参加作品です。

題名は The Smiths の初期の楽曲から。

 

 

 

 

 

 

 

              初代&五代目 ~お爺様と私~ 

                     ― Wonderful Woman ―

 

 

 


「なんという気の強い女なんだ」


千手綱手は男たちから何度この言葉を浴びせられてきたことだろう。

 

薄暗い賭博場で、賽を摘んだ綱手は、相手を見据えたままその賽を犬歯押し当てた。
賽は二つに割れ、中から出てきた細工を電灯に透かして見せる。
「女だからって、なめられたもんだねえ」
綱手は怒りを滲ませた低い声でそう言った。

元締めが顎をしゃくり、奥から人相の悪い用心棒がぞろぞろと登場する。
まるで時代劇を観ているようだとシズネは真珠を纏う豚を抱き竦めた。
「野郎ども!やっちまいな!」

怒涛のように用心棒が綱手に襲い掛かるも、
美しい踵を一踏みするだけで、賭博場は塵の様に崩れ落ちた。
宙を舞う紙幣を勘定しながら、これは色をつけて返して貰うよと綱手は少し笑う。

「私が伝説の鴨だって? 誰が言った?」
「くそっ! なんという気の強い女なんだ」

手も足も出ない男が苦し紛れに吐く捨て台詞。

 

 

女は常に淑やかで男に従うべきであるなどと
そんな馬鹿げた教育を受けた覚えなどないと綱手は目を眇める。
特に祖父である初代柱間からは幼い頃からこう説かれて育った。

― お前が大人に成る頃には女の時代が来る
  この国に女の力が必要となる
  鍛錬せよ 気を抜くな
  いつまでも強く美しくあれ 
  民の手本と成るような女になれ

 

国益の為、他国に嫁に出すことを考えていた綱手の父にとっては
柱間の教えは許しがたいものだった。
自身も他国より婿入りした身である。
祖父の黒髪に似ず、自身そっくりな金髪を持つ我が娘は何故、父より祖父を好くのか?
外見は自身に、内面は母方の血筋を受け継いだ娘の行く末を父は案じた。
この娘に幸せは訪れるのだろうか?
女の幸せは結婚に他ならないのに?

当の本人は父と祖父の教育方針の違いなど知りはしない。
綱手は綱手自身であるだけだ。
しかしながら、子供にとって自分の気性を理解し応援してくれる大人ほど頼もしいものはない。
綱手は雄雄しき祖父に憧れを抱きながら、強く美しく成長した。
歳の離れた弟を可愛がり、後には理解ある恋人とも巡り逢う。

 

人生は残酷だ。
その両方を喪った綱手は悲しみに暮れた。
戦争を憎み世を儚み、全ての始まりともいえる里さえも疎ましく思った。
以来、綱手は里を出て万国を渡り歩く。
酒と博打だけが心の拠り所だった。
負けが込むとあらゆる年齢に変化して逃げる。
蛞蝓姫の放蕩暮らしといえばその通り。
平穏無事な日々には若い姿で
― 弟ナワキと恋人ダンと共にあった頃の姿のままで過ごしていた。
弟ナワキの面影を持つナルトに里に連れ戻されても尚、その姿でいた。

 

 

金木犀が香る、月の綺麗な夜だった。
火影邸の窓辺に自来也がひょっこり現れた。
杯を呷る仕草で目配せしてみせる。
丁度、仕事が一段落した頃だった。
綱手は口角上げて自来也に頷いて見せた。


わずかなつまみと大量の酒を前に自来也が笑う。
「なぁんも知らん輩がワシらを見りゃどう思うだろのォ?ん?親子か?愛人か?」
「タワケ!」
綱手は一喝すると無表情のまま鞘から丹波黒枝豆を出して口に運ぶ。
「おお!そうか、ワシの為か? ワシ、若い娘スキじゃけ、それで、うっ!」
喋る自来也の、弁慶の泣き処に綱手の爪先がヒットした。
「そういう気の強いところにもそそられるんだから不思議じゃのォ」
向こう脛を擦りながら自来也は子供のような顔で笑った。
そんな自来也を尻目に、何本目かの徳利を空にした綱手が頬杖をついてうふんと笑う。
「お爺様の、初代火影柱間様の云いつけを実行してるだけ。
強く美しくあれとお爺様は、幼い私に言ったから」
「そんな…」
自来也も負けじと徳利を空にする。
「そんなこと、誰が信じるもんか。何故、本来の姿に戻れん?
ワシ、脂の乗った熟女もスキじゃ~。おまえの熟女姿、拝みたいもんだがのォ」
綱手は眉間に皺を寄せる。
「しつこいぞ、自来也。もう片方の脛も蹴飛ばしてやろうかい?」
自来也はぎりと奥歯を噛み締めた。

綱手が若いままでいる理由など解りきっている。
ダンに対する貞操と忠誠に他ならない。
いつになっても追いつけない。
綱手にとって自分はやっぱり丸太行きなのか。
ダンより、長く強く綱手を愛し続けているというのに。

 


「月が綺麗な夜だねえ。金木犀も良い香り…」

勘定を済ませた店の外で綱手が空を仰ぎ見た。

「ワシは…」

綱手の横顔を見詰めた自来也は喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。

『ワシはおまえと共に歳を取りたかった』


綱手は自来也の声無き叫びを感じながら、月から視線を動かすことが出来ずにいた。

『ああ、お爺様、この意地っ張りはお爺様似? 私、間違っていなかったよね?』

 


一瞬ではあったが、ふたつの影がひとつに重なる。
薄い雲が月を覆い隠した瞬間に。
上空では強い風が吹いているようだった。

 

 

 


inspired by Wonderful Woman / the Smiths  → http://www.youtube.com/watch?v=IsyE1M7mR7E

 

 

 

 

 


コメント(1) 
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コメント 1

ねね



ケイさん こんにちは♪
ご来訪とコメントをありがとうございますv
レスが遅くなって申し訳ありません;

アニナル迂回話で、テンテンが綱手に憧れて…っていうお話がありました。
きっと綱手は若いくノ一たちの憧れの的なんだろうなvと思います。
だってあんなに強くて美しい!
で、ピュアな部分も持ち合わせてる♪ 
そりゃ、惚れるってばよ(笑)
「女としての幸せな時間」私もあって欲しいと望みます。
自来也となら、おもろい夫婦になっただろうに…。
自来也、生きていて欲しいなあ。
終戦後、綱手と感動の再会&求婚をして欲しいですv
相変わらず夢ばっかり見ています(笑)

こんやからごっつい寒くなるそうです;
どうぞご自愛くださいねv
あ、もしかしたらホワイトクリスマスになるのかな。
楽しいクリスマスを!



by ねね (2011-12-22 10:46) 

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