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シュークリーム(2011年イル誕記念) [SS]

本日の妄想:イルカ先生はケーキよりシュークリームの方がお好きかもv
2011年度イル誕記念SS
2週間遅れですみません; やっとこさ書き上げました。 
蔵~Immoral~のヒロインさんでほろ苦仕上げに(笑)

アルカイックスマイルって、語源になった実物を見るまで良いイメージが無かった。
冷笑っていうイメージ、その代表とされるモナリザに対する私の印象なのかもしれないけれど。
先月、古代ギリシア博で観た像はとてもあたたかな感じを受けました。
顔には目が無く鼻梁と口角が上がった口元、直立ではなく僅かに腕と脚を前に進める形の像。
鼻疵と頭に尻尾つければイルカ先生…と思ったよ。

 

 

 

 

              ― シュークリーム ―

 

風薫る五月が終わり、湿気ばかりの六月は紫陽花だけが私の楽しみ。
この数日間、任務が無いから里の中をうろついてみる。
本屋で立ち読みして、新しい化粧品を買って、お昼には甘栗甘で茶蕎麦セットを食べて…。
このあと何をしようかな とセットに付いて来たミニクリーム餡蜜を食べながら外を眺める。

通行人達の傘の花が開く。
風で暖簾が翻ったときに見えたのは、相合傘の若いカップルや家族連れ
―私が死ぬまでにそんなことする日が来るんだろうか。
いや、ないね。
と 独り、苦く笑う。

通りの向かいの植え込みには雨に濡れた紫陽花。
ああ、そうだ。
このあと、山へ行って紫陽花をとって来よう。
部屋に飾れば、いつでも紫陽花を見ることができる。
それはとても素敵なアイデアのように思えて、餡蜜を半分以上残して店を出た。

 

同じ調子で雨が降り続く。
峠の手前、朽ち落ちた茶屋の傍に紫陽花が咲いていた。
大きな花の重さで茎が折れそうなほどに撓っている。
「これがいいかな… あ、こっちもいい。 両方貰って帰ろ」
独り言を言いつつ持ち帰る枝を選んで、クナイを手にしたとき、彼が現れた。

「いけないよ、よしなさい」

なに その先生みたいな言い方。
振り返ると、一目で任務帰りと解る無精髭を生やした鼻疵のある男が茶屋の裏側から出て来た。
頭の天辺で結わえた髪から雫が垂れている。
血と泥の臭いに包まれたその人は口元に笑みを浮かべた。
絵に描いたようなアルカイックスマイル。
腹の中で何を考えているのか解らない、計算された冷たい笑みだ。

「紫陽花を手折るのは止めといたほうがいい。 持って帰っても長くは持たないから」

別にいいのに。
僅かな時間でも紫陽花を見ることができればそれでいいのに。
不満が顔に出ていたんだろう。

「紫陽花はね、沢山の水が要るんだ。上からも下からも、滅茶苦茶要るから花器では無理だよ。
だから華道でも紫陽花は活けないだろ?」

アカデミーに通う子供に諭すように、その人は言う。
私はその人をじっと見て、続いて紫陽花をじっと見た。
まあいいや。
枯れた花は嫌いだ。
黙って、クナイをポーチに戻した私は軽く会釈した。
紫陽花をとれないなら此処に居ても意味は無い。
帰って、待機中のカカシと遊ぶ方がいいかもしれない。

「替わりに…」
と、声が背中から追っかけて来た。
「替わりにはならないけど」
そう言いながらごぞごぞと背嚢を背中から外して前に抱え込む。
「良かったら一緒に食べよう」
差し出した小箱には大きなシュークームがふたつ。
「峠を越えた向こう側の店のやつなんですが、旨いんです。
1個だけ買うのってちょっとアレなんで、2個買ったから…」

私はゆっくりと瞬きをした。
シュークリーム、長い間食べていない。
子供の頃は自来也さまが何度か買ってきてくれていたけれど。
「いいの?」
その人は笑みを浮かべてこくりと頷く。
「どうぞ。 裏側の屋根は落ちていないから雨宿りできますよ」
私は小さく礼を言って後に続いた。

手渡されたシュークリームは大きくてずっしりと重かった。
「うん! 旨い!」
その人は口いっぱいに頬張ってごくんと飲み込んだあとそう言ってまた微笑んだ。
「あ、オレ、うみのイルカっていいます。 アカデミー教師です」
私も名乗ってみたのだれど、うみのさんの反応は無いに等しかった。
私のことを知らない真面目なひとなんだろう。
どうでもいいか と思いながら、一口噛んでみる。
途端に横からクリームがはみ出てほっぺたにくっついた。
わあ、と驚く私にうみのさんが笑う。
「あはは、これだけデカいとね、クリームを吸いながら喰わなきゃだめですよ」
指が伸びてきたと思った次の瞬間、口の端とほっぺについたクリームを拭い取り
そのままちゅっと舐め取った。
なに?このひと?初対面なのに!?
「あ、すみません。ここのクリーム旨いから勿体無くて」
うみのさんは少し頬を赤らめて、鼻疵をぽりっと掻いた。
そしたら、今度は鼻疵に指に残っていたクリームが付いた。
「付きましたよ」
「えっ?」
「鼻の疵の所にクリームが」
ハンカチでぬぐってあげると益々顔を赤くする。
私はなんだか面白くって、うみのさんから目を離さずに舌先でクリームを舐めた。
雨は調子を緩めない。

食べ終わったあと、美味しかったともう一度お礼を言った。
うみのさんは不思議そうに私をじっとみつめる。
「オレ、受付もしてるんですけど…貴女のこと知らないです」
何が言いたいのか良くわかる。
「私、一応、根だから。 受付を通るような任務はしないの」
そうですか、と言ったうみのさんの口元が引き締まった。
「お勤め、ご苦労様です」
私は返事をせずに、うみのさんの笑い方を真似てみる。
うみのさんも少し笑って、深呼吸した。

「先々週、オレの誕生日だったんです。いつもは仲間や生徒達が祝ってくれるんですけど、
今年は長めの里外任務で留守していて…里を空けることは殆ど無いんですけどね。
だからセルフで祝おうと思って、ホールケーキ買ってもよかったんだけど、荷物になるし、
どうせ独りで祝うんだから一番好きなお菓子にしようと思って…。独りで喰わなくて済んでよかった。
誕生日の祝い、ひとりでするってやっぱみじめですよね」
そう言ってまた笑う。
それで解った。
いつもは仲間や生徒が…なんて言ってるけど、このひとも心の中に孤独を抱えている。

「お誕生日、おめでとう。 うみのイルカさん、遅くなったけど、お誕生日おめでとうございます!」

心からそう言って寿ぐ。
うみのさんを真似て精一杯笑ってみせる。

「あ、ありがとうございます」

微笑みながら礼を言ううみのさんは恥ずかしそうだった。

 

夜、眠るときにあの笑顔を思い出していた。
どうしてだろう?
今夜の枕はやわらかくやさしい感じがする。

アルカイックスマイル
そう悪くはないかも知れない。
二人の間に接点が無いにしてもね。

 

 

 

 

 

 

 



 


コメント(1) 
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コメント 1

ねね



ケイさん こんにちは♪
ご来訪とコメントをありがとうございますv

新鮮でしたか?
うへへ、それは嬉しいな♪
イルカ先生は教師をしているからか、初対面の人に対して緊張していてもそれを出さない人だと思います。
内心ドキドキでカチカチなんですけどね(笑)
そこはかとないえろの香り(爆笑)
だってこのヒロインは蔵の木の葉の色男総なめヒロインさんですものv
いつか、イルカ編を書けたらいいなv

いつも労いのお言葉をありがとうございますvv
そちらは大雨のようですね。
もしかして警報で学校お休み?
河川の増水とかご用心くださいね!
また遊びに行きますv
どうぞお元気でね~^^/


by ねね (2011-06-16 14:02) 

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