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絶唱 (火影祭り2010参加作品:四代目) [捧げ物]

今年も 対オフィシャルサイト様 にて火影祭りが開催されました。
僭越ながら、参加させていただきました。
上午様、ありがとうございました!

原作沿い妄想ミナクシ。
管理人は、wj503のあの台詞にヤラレましたvv

 

 

 

 

    

 

              

          ― 絶唱 ―

 

波風家の末っ子長男として生まれたミナトは、愛らしい顔のために
よく女の子に間違われた。
その度にミナトは外見さえ男らしければこんな目に遭わずに済んだのに 
と憤怒し、幼い自尊心が傷ついた。

その所為か、ミナトは初代火影千手柱間に強い憧れを抱くようになった。
金髪碧眼なんかじゃなくて、インパクトがある色の髪と瞳が欲しい。
マーク・レスター張りの美少年ではなく、太い眉にしっかりした顎を持って生まれて来たかったと嘆く。
せめて声だけでも男らしく低い野太い声で と願うのだが、テノール寄りの声は優しく、
姉達の影響か話し方もおだやかで柔らかな印象を与える。

成績優秀なミナトが劣等感を抱いているなどと誰が想像できたろう。
思春期を迎える頃のミナトは、多くの少年少女がそうであるように、現実と理想のギャップに苦しむ。
火影岩を見上げては、自分も初代様のような美丈夫になりたいと願う毎日だった。

 

 

そんなある日、アカデミーにうずまきクシナが転校して来る。


ああ、なんという美しい髪だろう。

ミナトの瞳は、クシナの燃えるような赤い髪に釘付けになった。
ひと目でクシナは何もかもが特別で、他の女の子とはまるで違うと直感した。
その上ミナトが持ち得ない物を全て持っているとわかった。
同じ夢を追う二人だったが、ミナトはクシナなら夢を実現できるだろうと想像した。
赤い血潮のハバネロと呼ばれる少女はそれほど強かった。
意地悪な少年達を片っ端からやっつける頼もしいクシナに、ミナトは憧れる。

ともだちになりたい」
そう願っても、クシナの周りには彼女を崇拝する少女達で溢れかえっていた。
この年頃の少女達が徒党を組むと敵うものはない。
人畜無害な美少年ミナトも少女達にかかると、その他大勢のじゃがいもみたいな少年達と同じだった。


憧れはやがて恋へと変わって行った。
だがミナトはこれを恋とは呼びたくなかった。
そもそも忍の男子たるもの、色恋なんぞもってのほかだと信じて疑わなかった。
火影を目指すのなら、尚更だ。
告白なんてとんでもない。
初代様だってそうだったに違いないとミナトは決め付けていた。
そして、アカデミー最上級生になっても大した接点も持たないまま、卒業の日を迎えた。

 

 

下忍になった初秋のある日、自来也がミナトを手招いた。
「ちょっとワシと一緒に来んか?」
ミナトが師匠について行った先は、火影邸にある書庫だった。
自来也と一緒でなければ出入りできない場所だ。
「探し物があるでのォ、おまえは適当に閲覧しとれ」
ミナトは素直に「はい」と言って古びた書物の間を彷徨った。

書庫の突き当たり、一番上の棚に物々しい長持が鎮座している。
書物ばかりの筈なのに とミナトは不思議に思い、自来也に尋ねてみたが、
師匠は古い春画に夢中なのか生返事しか返さない。
「開けて良いんですよね?」
「おお、勝手にせい」
念を押すミナトに自来也は面倒そうにそう言った。


身の丈の倍以上の高さにある古びた長持はミナトを呼んでいるようだ。
簡単な印を組んだミナトはジャンプして軽々と長持を床に下ろした。
指で触れると強烈なチャクラを感じる。
ミナトは息を詰めて慎重に開錠した。

長持の中、厳重に重なった箱におさめらていたのは、どれも古い手紙のようだ。
巻物もあれば、糸で閉じた帳面のようなものもある。
古代忍文字で綴られたそれらを、ミナトは瞬きもせずに見入った。
文末に記された花押にミナトは息を呑んだ。

「これは、初代様の…」


熱烈な恋文だった。

恐らく夫人に宛てられたであろう手紙の中には、和歌や散文も見られる。
ミナトは驚き、戸惑いながらも興味津々で開封を繰り返す。

「雄雄しい初代様がこんなに愛を叫んでいる!」

好きだの愛しているだの、漢が軽々しく口にするべきではないと
思い込んでいるミナトにとっては、驚愕の事実だ。
と同時にあまりの感動に胸が熱くなり、涙が滲んだ。
幼い頃に姉達からくどいほど聞かされた、王子と姫のロマンスが現実に此処にある。
姉達からお人形のように可愛がられたミナトは、その意志に関係なく、
細胞にロマンチックを書き込まれてしまっている。
男らしく…と振舞う努力をしていても、ロマンスに対する憧れは抗いがたいものがあった。
ああ、僕はクシナを好きでいいんだと、初めて己の恋心を肯定できた。


留守中の身を案じ、逢えない日を嘆き、相手をどれほど大切に想っているか。
里を興した英雄は、全ての想いを素直に筆に託していた。
ミナトは時間を忘れ、夢中で読み耽った。
あまりに夢中になっていたので、横から自来也が覗いているのにも気が付かないほどだった。

「ほほう、これは面白いものをみつけたのう」
自来也の言葉に、没頭していたミナトは飛び上がらんばかりに驚いた。
「流石は初代様、まさに絶唱じゃ!」
真っ赤になるミナトの頭をぽんぽんと自来也が叩く。
「し、師匠…」
「ん? あれか? おまえも惚れたおなごが出来たようじゃな?
ええのう、ええのう、若いっちゅうことはええのう~」
返事も出来ずに耳まで真っ赤になるミナトをからかうように自来也は笑った。
「ええ勉強になったじゃろう? だから、あれだ、な? 解るじゃろ?」
ミナトは素直に頷いた。
「はい、此処で見たものはお互い秘密にしておきましょう」

 

その夜から、ミナトは暇を見つけては箍が外れたようにせっせと筆を走らせる。
初代柱間を見習って、クシナへのほとばしる想いを照れも隠しもせず、滔滔と書き記す。
クシナの赤い髪を褒め、強さを讃え、一生を共にしたいとも書いた。
初代様の恋文に負けないほどの絶唱を…とミナトは書き続けた。
渡す予定などない。
ただ、想いを形にするだけでミナトの純情は満たされた。

 

 

 

雲隠れの忍がクシナを攫ったと聞いたときのミナトの行動の速さといったら無かった。
クシナ奪回の編隊に組み込まれていないことを知ると、即座に休暇願を出した。
その足で必要な忍具を揃えながら、明晰な頭脳をフル回転させる。
雷の国に入るには東の森を抜けると考えるのが普通だろう。
ミナトは北の森へ向かった。


わずかな手がかりも見逃さぬようひた走る。
幾重にも分かれた獣道の、踏みしめられた度合いを測りながら進む。

木漏れ日が差し込む森の中、光を反射してきらりと光るものがある。
世界一美しいと思っているクシナの赤い髪だった。
ミナトは低木に絡まっている赤い髪を手に取って思わずくちづける。

「クシナ、今助けに行くから、待ってて」

クシナの髪を指に巻きつけると、鋭い眼で前を見据えた。


数メートルおきに落とされていた赤い髪は、そのままクシナへの道となる。
気配を絶って慎重に距離を縮めるミナトは、緑深い森の中で際立つ赤い色を見つけ出した。
移動する赤い色は、ミナトにとって世界一愛おしい色だった。

 

木の葉一枚揺らさずに大木に飛び上がると、そのまま閃光となって敵陣へ。
無駄な動きが一切無く、舞うように次から次へとターゲットを仕留めてゆく。
雲隠れの忍はクナイに手をやる間もなく息絶えた。

縄で繋がれたクシナを横抱きにして木の枝に立つミナトの姿は、英雄そのものだった。
クシナはミナトの強さに見惚れるばかりで声も出ない。
頬を赤らめてミナトを見上げる腕の中のクシナに、ミナトは照れもせずに言った。

「綺麗な髪だからすぐにわかったよ。僕が大好きな世界一綺麗な赤毛だから」


クシナはたちまち恋に落ちた。

毎日のようにクシナへの愛を綴り続けていたミナトにとっては
歯が浮くような気障な台詞も自然に唇にのぼる。
この状況での告白は当然のことだった。
書き綴った絶唱は、そのままクシナへの告白の布石、シュミレーションとなった。

 


この日から、2人はお互いの自分でも気づかない魅力を引き出し合う。

クシナは強さと明るさに加えて優しさを。
ミナトは強さと聡明さに加えて逞しさを。

 


「キミが僕を本物の漢にしてくれた」


初めての夜、クシナを胸に抱いたミナトはそう言って感謝した。
ありのままの自分を受け入れてくれたクシナが愛おしかった。
クシナもまた、特殊な境遇にある自分を受け止めてくれたことが嬉しかった。
唯一無二のふたりであることが幸せだった。


折に触れ、ミナトはクシナに言う。
ぎゅっと抱きしめて、耳の傍で、囁くように優しく言う。

「キミの漢になれて嬉しいよ」


それはとても短く簡素な、初代も赤面するほどの絶唱。

 

 

 

 

 

 


コメント(2) 

コメント 2

ねね



ケイさん こんにちは♪
ご来訪とコメントをありがとうございますv

スッと入ってくださって嬉しいです! しかも2回目?きゃあー嬉しい!!
いたずら者の落ちこぼれだなんだと散々バカにされてきたナルトですが、
サスケのこと以外は自分に自信を失ったことが無いのは、こんなご両親だったからv
と思いたいです。
だってナルトはふたりの「愛の結晶」だから(笑)
その強さと優しさと器の大きさは遺伝子レベルで保障付き♪
本誌では気の抜けない展開になっていますが;;

本当に随分涼しく(寒く?)なりましたね;;
私の分だけ、本日冬の大布団を出して日に当てました。
去年くらいから冷え性というやつになってしまったようです;;
寒いと人肌恋しい…
またなんか浮かんだら書きたいですv
ケイさんも風邪などお召しになりませんよう、お元気にお過ごしくださいませvv







by ねね (2010-10-18 18:29) 

ねね



ナナさん こんにちは♪
ご来訪とコメントをありがとうございますv

こちらこそ大変ご無沙汰致しております;
読み逃げだなんて、そんな;;
私もナナさんちにお邪魔しては、「ナナさんガンバ!」と心の中で
エールを送って帰っていました(汗)
研修、お疲れ様でした!

ウチの四代目を気に入ってくださってありがとうございます!
なんだかキャラの意外な一面を描くことに萌えるんです(笑)

朝と夜はぐんと冷えますものね;
私も喉に違和感を感じつつ数週間が経ちます。
頑張り屋さんのナナさんvvどうぞご無理なさいませんように!



by ねね (2010-10-22 16:15) 

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