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うなじ [SS]

本日の妄想:イルカ先生のうなじは、うつくしい…

私的お彼岸記念SSです(笑)

ついこの前、冬休みだったのに、また春休みが始まります。
早っ!!!

 

 

            ― うなじ ―

 

「きっと気が合うと思いますよ」
半歩前を歩くスズメ先生が振り向いて、眼鏡の縁に手をやって微笑む。
「…はあ。 そうだといいんですが」
私には中途半端な返事しかできない。
長期の里外任務を繰り返していた私は、里に常勤する忍者を殆ど知らない。


アカデミー教師の新人研修のマンツーマンリーダーはうみのイルカ先生。
厳しいひとだと聞く。
頑固なひとだと聞く。
穏やかなひとだとも聞く。
一体どちらが本当なのだろう。

長い廊下から階段を下りて入学式準備で賑わう体育館へ。
花を飾るひと 横断幕を垂れるひと 椅子を数えるひと
どのひとがうみのイルカ先生なのだろう。

「ほら、あのひと。 うしろから5列目に座って、式次第の確認をしてる黒い髪の…」
スズメ先生がそっと耳打ちする。
「素敵な男性ですよ」

 

きりりと。

黒髪をきりりと結い上げたうなじが、とてもうつくしかった。


私はそのうつくしさに眼を奪われて、周りの喧騒さえ気にならなかった。
スズメ先生が「イルカ先生」と呼ぶ。


振り向いたひとは、陽に灼けていて、高い鼻梁に一筋の疵が走る精悍な男性だった。
真っ黒く大きな瞳。
意志の固そうな顎。
にっこりと微笑むと綺麗な白い歯が印象的だった。

私は慌ててお辞儀をする。
うみのイルカ先生は立ち上がって、ゆっくりとこちらへ進む。
本当はゆっくりではなかったのかも知れないと、後になって思い返す。
歩み寄るうみのイルカ先生が、私にだけスローモーションで見えていたのだろう。


戦忍として外地で闘い続けて来た。
男並に。男以上に。
故に、私は色んなタイプの男を沢山見て来ている。
眼が肥えているというべきか、同年代の娘達が熱を上げる男を好いと思ったことは無い。
確かに顔は好いのかもしれないけど、どれも薄っぺらで底が見えてしまう。
今日、初めて会ううみのイルカ先生は、そんな他の誰とも違っていた。
忍服を規定通りにきっちりと着込み平凡そうに見えるのに、醸し出す雰囲気や何もかもが
他の忍者、否、男と違うように感じられた。
それほど初めて会ったうみのイルカ先生は、私にとって衝撃だった。

 

スズメ先生が紹介してくれる。
うみのイルカ先生はスズメ先生をじっとみつめて話を聞いた後、私に視線を移した。
「うみのイルカです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
差し出された右手は温かく頼もしい。

「あら、もうこんな時間。 イルカ先生、よかったらお昼ご一緒してくださるかしら?
わたくし、これから木の葉病院へ薬草を取りに参りますので」
うみのイルカ先生が二つ返事で引き受けると、スズメ先生は踵を返した。
私はお辞儀をしてスズメ先生を見送る。

 

「ラッキーでしたね。 今日の定食、うな重だなんて珍しいんですよ」
窓際に着席しながらイルカ先生が嬉しそうに笑う。
こんな風に笑うひとが本当に厳しいんだろうか。
「ああ、そうなんですか。ずっと里外で…ご苦労様でした。 怪我のこと、残念です。大変でしたね。
だけど、そのお蔭でこうやってアカデミー教師になったんだ。これがホントの怪我の功名…なんちゃって」
こんな風にオヤジギャグを言うひとが本当に厳しいんだろうか。
「アカデミーの仕事はやりがいがありますよ。 しっかり頑張って下さい」
先入観は次第に薄れていく。
うみのイルカ先生は、スズメ先生が言うとおり素敵な男性のようだ。

「ああ、美味かった。 あれ? 鰻、苦手だった?」
「あ…あまりお腹が空いてなくて…」
緊張で食べれませんなんて十代の女の子みたいなことは言えない。
「そう? じゃあ、オレ貰ってもいい?」
返事をする前にお箸が伸びた。

そのとき思った。

「私、このひとについていこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元ネタは明治42年生まれの故祖母の実話です。
晩御飯に鰻が出る度に祖父とのお見合い時の話を聞かされました。
「あのひとやでと云われて見たら、うなじがきれえでなあ。
緊張して残したら、まむし(昔大阪では鰻をまむしといった)
要らないの?僕、食べるよって言わはった。この人は大丈夫やと思うた」
って90過ぎても乙女のように話していました
人生なにが吉兆になるかわからんもんです(笑)
お彼岸です。 合掌・・・・・

 




 


コメント(5) 
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コメント 5

ねね



ケイさん こんにちは♪
早速のご来訪とコメントをありがとうございましたv

祖父はぼんぼんやったらしいです。戦争に取られないほど身体が弱かったらしい。
ホンマかどうか、すっごい男前やったと伯母達が言います。
空襲で1枚も写真が残っていないので、なんとでもいえる(笑)
父が7歳の頃35歳で急遽したから、祖母の中で思い出がどんどん美化されていったんでしょうなー。 それにしても、明治生まれのひとは凄いよね^^
うははv今気付いた♪一字違いで大違い!うなぎとうなじ。まるであんことうんこ(笑)


そうなんですよvイルカ先生は色んなマジックを持っています。ポジティブマジック♪
このヒロインさん、気に入っていただけたようで嬉しいですv
またいつか、このヒロインさんで書けたらいいな^^
一番乗り、ありがとうvvvvv

by ねね (2009-03-18 16:10) 

ねね



ナナさん こんにちは♪
ご来訪とコメントをありがとうございましたv

この話だけ聞くととても優しいおばあちゃんのように思われるかも知れませんが、
実際は驚くほど自由人! 宇野千代か!?と母と何度ツッコンだことか!
でも最後まで乙女心を忘れませんでした。
若いお医者さんの回診のこきは白粉をはたいてたし(笑)
そういうところは見習わないといけないなあと思います;;

はい、イルカ先生と一緒だと美味しく沢山食べれますよvv
スズメ先生? アカデミーくノ一クラスのちょっと怖そうな先生ですよ♪
今回はでしゃばりオヨネバアさん的な役どころで出演して貰いました(笑)



by ねね (2009-03-19 18:54) 

ねね



ナナさん♪
レスが遅れてすみません;;

そうそう!オヨネ婆さん、昔の長屋には絶対ひとりは居たでしょ?
鬱陶しくもありがたいお節介オバサン(笑)
今では絶滅の危機に瀕してますねえ;;
明治時代の人は面白いです。
石鹸をシャボンと呼んだり、帽子をシャポーと呼んだり…独特の文化を感じます。
なんだか可愛らしいですvv


by ねね (2009-03-23 11:43) 

ねね



緋桜さん こんにちはv
ご来訪とコメントをありがとうございました♪
レスが遅れてすみません;;

うははvあんことうんこに反応してくれてありがとう!
おおっ!緋桜さんのおばあさまはビールを飲まれるのですか!?
やっぱりお酒は百薬の長ですね~vv 皆と同じように乾杯できるって素敵♪
祖母は毎食前に赤玉ポートワインを少しだけ飲んでました。
そういえば「二十歳になったら赤玉」というCMを久しく見てませんわ~。
祖母は素敵だったのかな~???? 自由気儘に暮らしてた事は確かです。
お蔭で嫁に来た母はずっと振り回されてた気がします(笑)

今週は先週と打って変わって寒いですね;;
季節の変わり目は無理なさいませんよう、元気にお過しくださいねvv



by ねね (2009-03-23 11:53) 

ねね



金鳳花さん 続いてご愛読ありがとうございます♪

そうなのかな~?単に天然だったりして(笑)
もしそうだとしたら、なんて粋なんでしょ♪

うわ~v金鳳花さんの拙宅のイルカ先生像、そんな風に感じて下さるとは嬉しいです!
そうなの!イルカ先生と一緒に居ると肩の力が抜けるというか、
「あ、なんだ、私、このままでいいんだ」と思えるといいなv

男のうなじ=汚れの首輪(爆笑) 
若い子ならいざ知らず、ゴッシゴシで洗ってもイーブンってトコです(←イーブンて言いたかった)



by ねね (2009-03-30 19:13) 

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