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スウィング [素敵な頂き物]

花酔回廊の緋桜さまより戴きました。
ブランコのつづきで、イルカを選んだ場合のお話です。

大人向けのため、子供は続きを読んではいけません!!

それにしても、カカシが黒くて素敵~~vv
そしてイルカ先生があああああ!!

緋桜さん ありがとうございました!
イルカ先生の萌えポイントがほぼ同じだという事が解って、とっても嬉しいです♪

 

 

 

          ― スウィング ―

 


「・・・カ・・イルカ・・くん」

緋桜の唇は確かにイルカを呼んだ。

イルカはカカシの方をチラとも見ずに、緋桜の手を握り語りかける。

「緋桜ちゃん、オレだよ。イルカだよ!」
「・・ルカ・・くん・・イルカくん・・・」
「そうだ、オレだよ。もう大丈夫。オレがついてるからな」

緋桜が少しずつ眼を開ける。
まだ夢の中を彷徨っている様な、混沌とした意識。
しかしイルカの名ははっきりとその口から吐き出された。


カカシはその様子をじっと見据えていた。
瞬きもせずに。


緋桜の意識がはっきりと戻る。

「緋桜ちゃん!」
「イルカくん・・・私・・?」
「ひどい怪我だったんだよ。何日も眠ったままで心配したんだ。・・本当に良かった」

イルカが緋桜の手をしっかりと握り、涙を浮かべながら安堵の気持ちを伝えた。

次第に思考が回り始めた緋桜は、強い視線を感じてはっとする。
その方向を見遣ると、カカシが腕を組んで威圧を込めた眼を向け立っていた。

ぞく・・と悪寒が緋桜を襲う。
あれは、任務中にカカシが敵を見る時の眼だ。
鋭く殺気を込めた右眼。
暗い光を放ち、緋桜から逸らさない。


「あ・・・カカシ・・・」

緋桜が呼んでもカカシは動かない。
息苦しい沈黙。

「カカシ・・・・・あの・・」
「意識が戻って良かった。ま、今日の所はこれで失礼するよ。それじゃ・・」

カカシがゆっくりとドアに向かう。
緋桜は呼び止める事が出来ない。

ドアを閉じる瞬間、こちらを振り向いたカカシが口布の奥で笑った気がした。

 

カカシが出て行ったのが合図の様に、固まっていたスタッフが動き出した。

綱手が緋桜に歩み寄り、いくつか質問をする。

「気分はどうだい?」
「少し頭痛が・・・。それと、手足が重い感じです」
「その程度なら問題ない。毒が全身に回っていたんだ。直によくなるよ」
「ありがとうございます」

綱手は敢えてカカシの事には触れなかった。

 

「緋桜ちゃん、どんな夢を見ていたんだい?」
「夢?」
「ああ。すごく楽しそうな顔してたよ」

イルカが笑顔で尋ねる。

そう言えば、確かに夢を見ていた。
いつも見るあの夢。
でも、ブランコに乗っていたのは子供のイルカではなくて、大人の自分。
背中を押す大きな手は・・・イルカ?・・・カカシ?

『そろそろジャンプだよ』と言われて前を見ると、そこにいたのはイルカだった。
私が求めていたのはイルカだったのか・・・?


カカシは欲しいものは全て与えてくれる。
広い家。
暖かなベッド。

カカシと一緒にいるだけで里での待遇は格別だ。
カカシの女という肩書きだけでも、常にVIPだった。
傅く人々を横目で見て、お姫様か女王様気分でいられた。

そして、激しく、深く、淫靡な快楽。
求めればそれ以上の悦びを与えてくれた。
カカシの体に慣らされてしまったら、今までの男がカス見たいに思える。
それ程に、カカシの手技は究極だった。
あの指に、舌に溺れてしまった体は、浅ましい程にカカシを追いかける。
他の女を抱くカカシが憎くもある。
ならば、とカカシは緋桜の目の前で他の女を抱いた。
緋桜にする様に、知らない女の体を愛撫し、舐めて、弄って、貪る。
しかし、それはカカシの策略。
そうする事で、緋桜を煽り、もっと自分を欲する様にし向けているだけだ。
火影命令だと言わんばかりに、求められるがまま関係を持つのは、
全て緋桜を自分に縛り付けるためなのだ。
案の定、緋桜は我慢できずに自分からふたりの間に割って入る。
嫉妬と荒淫と。
その鎖に絡まれたまま、緋桜は腰を振り、淫蕩にふける。

全てはカカシにコントロールされた生活。
知らず知らずの内に、緋桜はカカシの手の中に落ち、抜け出せなくなっていた。
けれど、夢の中だけはカカシの領分ではない。
緋桜の想いのままに駆ける事が出来た。
そこで子供のイルカはいつもブランコに乗っていた。
あの日、そのブランコを久しぶりに見ながらイルカに掛けられた言葉が頭から離れない。

『カカシさんといて、幸せかい?』

何度も避けてきた疑問をイルカに投げかけられ、戸惑った。
イルカの優しさが急激に染み込んでくる。

女の影を隠さないカカシ。
愛していると言うカカシ。
緋桜無しでは、恐らく生きていけないだろうカカシ。
そんなカカシに縛られて、疲れ果て、それでもカカシから離れない我欲な自分。
それら全てを捨て去って、ただただ夢中になって漕いだブランコ。

その先にいたのは、イルカだった。
乾いた心を潤してくれるイルカ。
心地よいぬるま湯に、思い切り浸かりたかった。

 

「夢にオレが出て来たのか?」
「あ~・・うん、そう・・・イルカくんがいたわ」
「オレを選んでくれて嬉しいよ」
「・・・選ぶ・・?」
「ああ、そうさ。譫言でオレを呼びながら目覚めたんだ。
 カカシさんよりオレを選んだって事だろう?」


そう言う事なのか・・・?


緋桜自身、判らなかった。
でも、確かにこれでカカシと終わりなのだと思ったら、何だかすごく楽になれた。
もう、嫉妬に狂って体を貪る事もない。
お姫様の様な生活が無くなるかわりに、穏やかで暖かな幸せが待っている気がした。

 

「そうよ。私、イルカくんがいい」
「緋桜ちゃん・・ありがとう。嬉しいよ」

イルカが、緋桜の手をぎゅう、と握り、顔の傷を歪ませて笑った。

 

 

 

 

数日後、緋桜は退院した。

カカシはあれ以来姿を見せない。
イルカは訝しんでいた。

あれ程緋桜に執着していたのに、たった一言イルカ、と名前を呼んだだけで諦めるとは思えなかった。
けれども、自分との間を邪魔する事も、緋桜を奪いに来る素振りもまったくない。
任務で里外にでも行っているのか。
それとも、自分を遠くに飛ばす手はずでも整えているのか。
イルカはカカシがどう出てくるのか警戒していた。

 

「緋桜ちゃん、荷物片付けるの手伝おうか?」

入院中の荷物を、緋桜の部屋に運んでくれたイルカ。

「ありがとう。でも、大丈夫。ひとりで出来るわ。それより・・・」
「ん?なんだい?」

緋桜はもじもじとしながら、イルカの指をそっと撫でる。
カカシにはそれだけで通じた無言の求愛。
けれど、イルカには伝わらない。

「何かお願い事でもあるの?買い物なら書いてくれれば買ってくるよ?
 それとも、おなかすいた?何か作ろうか」

焦れったい。

緋桜は何も言わずイルカに抱きつき、唇にキスをした。
すぐに舌を動かす。
イルカはものすごく驚いていたが、すぐに反応して緋桜の体を抱きしめ、舌を吸い上げた。
夢中で唇を重ねる。
溢れる唾液に構うことなく。

イルカの下半身に、甘いしびれが走った。
緋桜の手が、既に勃ち上がり始めたイルカに伸ばされている。
指で強弱をつけ、撫でて握って玩ぶ。

「緋桜ちゃん・・・」

キスを中断してイルカが緋桜を制する。

「・・ん・・なぁに・・?」

イルカのベストを脱がせようと緋桜はファスナーに手を掛けていた。
愛撫を続ける手は、そのままに。

「ぅ・・ダ、ダメだよ・・。今日、退院して来たばかりで・・・体が・・・」
「平気よ」
「だけど・・・ぁぁ・・・」
「抱いて、イルカ。もう我慢出来ない。イルカに抱いてほしいの」
「緋桜ちゃん」

足を縺れさせながらベッドに倒れ込んだ。
キスが再開され、舌と唾液と吐息が交換される。
緋桜の手は、イルカの雄から離れない。
柔らかな快感は、イルカの中心から全身に広がっていった。

「緋桜ちゃん・・・緋桜ちゃん・・・・・」

譫言の様に何度もその名を口にする。
その声を聞く度に、緋桜の奥にも蜜が生まれて疼き出す。

「は・・ぁ・・イルカ・・イルカ・・・・」

白昼の光の下、緋桜の白い裸体が少しずつ現れる。
細い首から綺麗な鎖骨。
そして、張りのある柔らかなふたつの膨らみ。
その先端に色付く小さな実は、イルカの指を待ちわびる。

そうっとイルカが手を這わせる。
触れるか触れないかくらいの淡い刺激は、帰って欲望を膨らませた。

「はぁ・・ん・・・・・いや・・もっとぉ・・」

緋桜の甘い声に煽られ、イルカがエスカレートしていく。
指が全身を撫で回し、舌で舐め上げ、唇で吸い尽くす。

とうとう猛ったイルカの杭が緋桜を貫き、何度も突き上げた。
緋桜は声を上げ、首を振り、喉を仰け反らせてイルカを受け入れた。
そんな緋桜を眼下にして、イルカは夢中で腰を使い、そして果てた。


荒い息を整えながら、イルカが緋桜を腕に抱き寄せた。

「緋桜ちゃん・・・良かったかい?」
「・・うん・・・・・」
「もう、全部オレのものだね」
「・・好き・・・好きよ、イルカ」


緋桜は達せなかった。
それ以後、何度体を重ねても、緋桜の体はイルカに応えない。
イルカの世界にひたろうとするのに、一緒に連れて行ってはもらえなかった。
イルカの下で、緋桜は毎度演技を繰り返す。
その優しさに包まれ、心は満ち足りているはずなのに、体は乾いていくばかり。
自分の体を慰める。

 

 

 


数ヶ月が経った頃、待機所にいるカカシと遭遇した。
あれ以来里内でカカシを見かける事すらなかったのに。
長椅子に座り、寛いだ様に長い脚を組み、いつもの本を斜め読みしている。

「カカシ・・・」
「ああ・・久しぶり。元気だった?」

ちらりと緋桜を見遣ると、すぐに視線を本に戻し、まるで興味無さそうに尋ねた。

「うん・・・カカシは?」
「ま、それなりに」
「・・隣・・座っていい?」
「ご自由に」

素っ気ない態度に戸惑いながらも、緋桜はカカシの隣、ひとり分のスペースを空けて腰掛けた。
途端に感じるカカシのフェロモンに目眩が起きる。
かつて何度も燃えた体が勝手に反応し、緋桜の奥に静かな炎をもたらした。
当然、カカシは気付いている。
しかし、素知らぬ顔で本を見る。

もじもじと腰を焦らせながら、緋桜の意識は完全にカカシに向いていた。
体が覚えている。
カカシの愛撫を。
あの忘我の境を。

そうだ、と緋桜は思い出す。
カカシは来るものを拒まない。
付き合っている時でさえも、求められればどんな女も抱いていた。
ならば・・・と意を決してカカシに尋ねる。

「カカシは・・相変わらず・・・頼まれれば断らないでいるの?」
「ん~?まぁね。オレも今はフリーの身だし、前より盛んよ?」
「じゃあ・・私が頼んでもOKしてくれるの?」
「は?」

カカシはわざと驚いた様に振る舞い、緋桜の出方を楽しむ。

「オレよりイルカ先生を選んだお前が、何で今更?」
「それは・・・」
「ああ、つまり彼じゃお前を満足させてあげられないわけね」

図星を指されて、言葉に窮する。
何もかも解っているくせに、本当にずるい男だと思った。
けれど、そんな所も魅力なのだと改めて気付かされる。
恐らく自分の体の変化にもカカシは気付いているだろう。
それでも知らんぷりを通して、確認するかの様に問うてくる。
憎い。
憎らしいけれど、どうしようもなく惹かれる。

緋桜は、答えの代わりに憂いを含んだ瞳でカカシを見つめた。

ふ、とカカシが笑う。
満足し、勝ち誇った笑み。

「オレにだって選ぶ権利はあるよ。誰とでも喜んで寝るわけじゃない」
「カカシ・・・」
「お前とは寝ない。答えはNOだ」

ぱたん、と読んでいた本を閉じ、カカシが待機所から出て行った。
疼いた体が急速に冷めていく。

 

 

 

ひとりブランコに乗り、空を見上げた。
澄んだ青。
浮かぶ白。
ゆっくりとこぎ出すと、視界も揺れる。

美しい光景に似合わない自分。
欲に支配され、自分の『心』が見えない。

失ったものは何だったのか。
得たものは何なのか。
未だ答えを見つけられず、緋桜の心はカカシとイルカの間で揺れる。
このブランコの様に。


どこまでも深く優しいイルカ。
全てを受け止めて、大きく包み込んでくれる。
疑う余地はない。
真っ直ぐに、どこまでも染み込んでくるその愛情は、永遠に信じられる確かなもの。
この澄み渡る大空に似て。

カカシとの生活は、いつも満たされないものを抱えて佇んでいた様なものだった。
どこにも進めず、戻る事も出来ず。
カカシは体以外の全てを捧げてくれた。
彼の愛を疑った事などなかった。
ただ、里のためとは言え、自分以外の女を抱くと言う事実を、女の性(さが)が受け入れない。
カカシの全身全霊の愛を、心の底から信じる事が出来なかった。
進みたい。
戻りたい。
その気持ちの狭間を行き来するだけ。
目の前に浮かぶ、白い雲の様に。


私はずっとこのまま揺れ続けるのだろうか。
カカシとイルカの間を。
心の充足と体の渇望の谷を彷徨うか、それとも以前の様に、索漠とした心でアクメの海を泳ぐのか。

 

 

 

 

 

「緋桜さん、五代目が呼んでいます」

退院後は、執務室勤務を命じられてた。
綱手の呼び出しを知らせに来た中忍に礼を言い、すぐに火影の部屋へ向かう。


重く大きな扉をノックすると、シズネがトントンを抱えて出て来た。

「どうぞ」

真っ直ぐに綱手の前へ進み出る。

「お呼びでございますか」
「ああ。その後は体の方はどうだ?」
「はい。病院での検診も問題ありません。リハビリがてらに始めた修業も、本格的に出来る様に」
「そうか・・・」

綱手は一枚の紙を取り、緋桜に渡した。
それは任務依頼書で、すでにカカシを隊長として2人の上忍の名前が書き込まれていた。

「その任務は4マンセルで行ってもらおうと思っている。
 緋桜・・・行けるか?」

あの大怪我以来の大きな任務。
恐らく戦闘になると予想される。
隊長はカカシ。
申し分ない。

「はい。もちろんです」
「よし。出立は3日後。詳しい事は追って連絡する」
「確かに拝命いたしました」

 

 

 


密書を持たせた部隊が、次々に襲われた。
かなりの手練れの集団と見られる。
今回、カカシ隊は囮だ。
本隊は明日出発する。
カカシ隊が木の葉から出る事はある程度広めてあった。
敵はまんまと策に引っかかり、襲いかかってきた。

任務は難航を極めた。
30人程のその集団は、大蛇丸の手の者らしい。
と言うより、カブトの手下だ。
薬品や毒を扱い、医術を操る。


「やっかいだな、こりゃどーも」
「カカシさん、オレが陽動に走ります。その間に3方向から敵を攻めて一気にいきましょう」
「そうね、敵も半分に減ったし、チャクラも弱まってきてるわ」
「チャクラの解剖刀には気をつけろ。触れられただけで筋肉を断裂されるぞ。
 遠距離攻撃を中心に使え」
「じゃ、行きます。配置について下さい」

ひとりが正面から敵に向かう。
その間に他の3人が影分身でぐるりを敵を囲み、一カ所に追い詰めた。
恐らく大蛇丸とカブトの目的は密書などではなく、自分達で育てた者達の力試しか、
もしくは薬品や教えた術の効力を見たかっただけなのだろう。
個々の能力はそれなりでも、全くまとまりがない。
果ては仲間割れも見られた。
追い詰めたならこちらのもの。
呆気ない程簡単に敵を殲滅させた。


「全員無事か!」

カカシの声が響いた。

「はい!」

それぞれに無事を知らせる返事が聞こえた。
全員の死体を集め、その中からやっかいと思われる薬品を取り出す。
それから火を放ち、何も残らない様に始末しなければならない。

少し離れた所から、カカシが火遁を放った。
もうもうと煙が上がる。
その煙の向こうから、数本の千本が飛んできた。
恐らく、最期の力を振り絞って、闇雲に放って来た物だろう。
その中の1本が緋桜に向かって真っ直ぐ飛んできた。
すっかり油断していたため、回避困難。
緋桜は、顔を目がけてきたそれを、腕で受けようと顔の前で組んだ。

ぶっ!

鈍い音がした。
緋桜が眼を開けると、カカシが千本を手の平で受け、手っ甲で留まっていた。

「大丈夫か?」
「カカシ!」

慌てて千本を抜いた。
血が噴き出てくる。

「私じゃなくて!」
「オレは大丈夫。かすり傷だ」
「でも・・・」

持っていたハンカチで抑え、出血を止めた後に見てみると、案の定毒が塗られていて、
傷口がどくどくと脈打ち、周囲がただれてきた。

「早く帰って綱手様に診せた方がいいですね!隊長、急ぎましょう」
「走れますか?」
「ああ、大丈夫だ。行こう」

 

 

 
里に帰り、隊を解散させる。
カカシは綱手の所にひとりで報告に向かい、そのまま治療を受けた。

 

緋桜は落ち着かない時間を過ごしていた。

カカシはどうしただろう。
まだどうなるか判らない状況で、油断していたのは自分なのに、
一言も責めることなく、庇い怪我を負ったカカシ。
ひどい毒じゃなかっただろうか。
苦しんでいないだろうか。


「緋桜ちゃん・・・カカシさんが心配なのかい?」

任務から帰り、事情を聞いていたイルカが尋ねた。

「イルカ!ごめんなさい!!私やっぱり様子を見てくる。
 私のせいで負った怪我だもの。気になって・・・」
「判った。行っておいで」
「ありがとう、イルカ!ちゃんと帰って来るから・・!」
「ああ。気をつけて」

 

 

快く送り出してくれたイルカに感謝しながら、緋桜はカカシの家へと向かった。
何度となく通ったそこは、あの日イルカを選んだ時に、もう二度と来る事はないと思っていた。

ドアベルを鳴らしてみた。
返事がない。
すっかり回復して、アスマ達と飲んでいる事を祈る。
結界が張られたドアは、ふたりだけの秘密の印で解ける事になっていた。
今でも変わらなければ、それで開くはず・・・と緋桜は秘密の印を結ぶ。

ふ、と幕が上がった様に結界が解けた。
ドアを開けると、すぐにただならぬ気配が漂ってきた。

「カカシ!」

寝室へ勢いよく走り込む。
ベッドで、脂汗を額に浮かべ、荒い息をするカカシが横たわっていた。

「どうしたの?痛いの?苦しいの?毒は?」
「お前こそどうしたのよ、こんな所に」
「ごめんなさい。私のせいで・・・。医療班を呼ぶわ」

印を結ぼうとする緋桜の手をカカシが止めた。

「大丈夫だから・・。毒は抜いてもらったんだ。
 でも、完全と言うわけにいかないから、少し熱が出るって言われた。
 他はどこも何でもない。・・もう、帰っていい」
「イヤ。せめて熱が下がるまで看病させて」
「・・・好きに・・しろ・・」


毒のために出た熱は無闇に下げてはいけない。
体がその毒を認識し、死滅させようとして出る熱。
防御反応の一種であると同時に、体にその毒を覚え込ませるチャンスでもある。
次に同じものを使われても、耐性が備わり、反応しにくくなるためだ。
ましてやカブトの作りだしたもの。
多少苦しくても体に記憶させた方が、後々役に立つはずだ。

冷却枕とタオルで頭を冷やす。
時折、カカシが緋桜の名前を、呻く様に漏らした。
胸がきゅう、となる。

 


夜が明け、カカシの熱が下がってきた。
呼吸も落ち着き、表情も穏やかになった。

ほ、と安堵のため息を吐く。
すぐに綱手の治療を受けたのが良かったのだろう。
大事に至らずに済んだ。
最後に汗で湿ったパジャマを着替えさせて、緋桜は部屋を後にした。

後ろ髪を引かれる想い。
でも、前を見れば、白んだ空にイルカの笑顔が浮かび上がる。


イルカを悲しませたりできない。
帰らなくちゃ。

イルカの家に向かうと、忍術学校に行く準備をしていた。

「おかえり」
「あ・・ただいま。今から?」
「ああ」
「朝ご飯・・」
「済ませたよ」
「そう・・」

少し気まずい空気が流れる。

「カカシさん、どうだい?」
「ひどい熱だったけど、もう大丈夫。ごめんね、イルカ」
「謝る事ないよ」

そう言いながらも、イルカの表情は暗く険しい。
イルカも苦しんでいるのだと思うと、胸が痛む。
そうさせている自分が一番悪いと緋桜自身痛感していた。


「緋桜ちゃん・・・オレ達、もう終わりにしよう」


通勤鞄の中を確認しながら、ランチの約束でもキャンセルするかの様に、イルカが軽い調子で言った。
あまりにも突然で、あまりにも平然と言うイルカに、緋桜は言葉に詰まる。

「え・・ど・・して・・何でそんな事・・・?」
「オレじゃ緋桜ちゃんを満たしてあげられないだろ?体も生活も。気付いてないと思ってた?」
「イルカ・・・」
「いつか訊いたね『カカシさんといて幸せかい?』って。
 オレは自分に訊いたんだ。『緋桜ちゃんといて幸せか?』って。
 答えはNOだ。なぜか判るかい?大好きな緋桜ちゃんといるのに幸せじゃないなんてあり得ないだろ?
 それは、緋桜ちゃんが幸せじゃないからだよ。オレじゃ幸せにしてあげられないんだ。
 もう一緒にいるのはオレがつらい。・・・だから、オレのために別れてくれ」

涙が出そうになった。
イルカはうそを言っている。
男気の強いイルカなら、『オレのために別れてくれ』なんて思ってるはずがない。
お前のために別れてやる、等と言えば、緋桜が気に病むと思ったのだろう。
緋桜がカカシの元に帰りやすい様に言っている言葉だとすぐに判った。
その優しさに胸を打たれる。
こんなにもイルカを傷つけていたなんて、自分の事で精一杯で気付いてあげられなかった。

「イルカ・・・ごめんなさい」
「謝るなって。オレさ、緋桜ちゃんには絶対に幸せになって欲しいんだ。
 だから悲しんだり苦しんだりしたら、いつでも言って。オレ、ヒーローみたいに駆けつけるから」
「うん・・覚えておく」
「幸せにね、緋桜ちゃん」
「ありがとう、イルカ」
「・・・じゃ、オレそろそろ行くよ」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」

これが最後の朝の挨拶。
噛みしめる様な想いを言葉に乗せ、イルカは駆けて行った。

 

 

別れを決めた場所で、緋桜はうつろに佇む。
優しいイルカを苦しめておいて、別れたからといってすぐにカカシの所へ行くと言うのもためらわれる。
いや、そもそも自分はカカシの所へ戻りたいのか・・・という疑問も浮かぶ。
嫉妬と愛欲にまみれたあの生活にまた戻りたいのか・・・と。
毎日の様にひっそりと涙したあの日々に。

それは、恐れにも似た気持ちが沸き上がる。

結局、ふたりの男の間を行き来して、どちらも選んでどちらも選べず。
大きく傷ついた3人の心。

イルカには悪いかも知れないが、緋桜は心の中で燻っていたものが取れて、ほっとしていた。
イルカの一途な想いに応えきれない自分が申し訳ないと思っていたから。
カカシの所にも戻らない。
いくら愛してくれても、あんなに切ない想いは繰り返したくない。

勇気を出そう。
どっちつかずの自分のせいでふたり大切な人と別れる事になってしまった。
同じ過ちは繰り返さない。
揺れるブランコからジャンプした先には、新しい幸せが待っていてほしい。

 

 

 

緋桜の元へ、鳥が1羽飛んできた。
足に何かつけている。
巻きついている紙を広げると、粉薬の袋が入っていた。
『カカシに飲ませて』と、書いてある。
シズネだった。
昨夜の様子を、カカシの部屋から帰る時に同じように鳥で知らせた、その返事だ。
綱手の医療術で後遺症の心配はないと思うが、相手はあのカブト。
念には念を・・と、カカシの体から採取した毒を元に作られた解毒剤だった。

緋桜は薬を握りしめ、カカシの家に向かった。

 

 

ドアベルを鳴らす。
昨夜は返事がなかったインターホンから、カカシの声が聞こえた。

『ちょっと待ってて』

少し待っていると、髪をタオルで拭きながらカカシがドアを開けた。

「お風呂?熱下がったばかりなのに・・・」
「任務から帰ってから入って無かったから、色んな匂いが上がってきて気持ち悪くて」
「判るけど・・・」
「で、何?今度は」
「シズネから薬を預かったの」

ポーチから袋を取り出してカカシに渡す。

「元気になって良かった・・・。本当に心配したのよ。
 まあ、それも私のせいなんだけど・・・。じゃあ、ちゃんと薬のんでね。お大事に」


妙に晴れやかな表情の緋桜に、カカシは少し焦る。
あの大怪我の前は、自分を追いかけ、苦しい程に焦がれているのが判った。
イルカを選んでからも、満足出来ない体を持て余し、抱いてくれと言ってきた。
その執着が今はまるでない。
全くの他人を見る眼でカカシを見ていた。


「待って」

思わず腕を取って引き留める。
不思議そうにカカシを見上げ、引き留めた理由を眼で問う。

「あ~・・えっと・・・・・っくしゅんっ」

上半身裸に濡れた髪。
熱が引いたばかりなのに、そんな格好でしかも玄関先で立ち話では、ぶり返すのも時間の問題だ。

「大変!早く中に入って!暖かくして今日は寝てるのよ。じゃあね」

慌てて玄関を出てドアを閉じようとした。

「緋桜!待てよ!」

今度は肩を強く掴み、玄関に連れ戻された。
同時に壁に押さえつけ、柔らかな唇に熱い唇を押しつける。

「っんん!」

抵抗してもカカシはやめようとしない。
舌を潜り込ませ、口内を犯そうと動き出す。

「イヤ!やめて!!」

腕の中で必死にもがき離れようとする緋桜を見下ろす。

「この前は断ったけど、今日は抱いてやってもいいよ。
 オレじゃなきゃイけないんでしょ?」

カカシが艶然と微笑み、手を差し出した。

「・・・おいで」

鼓動が速まる。
この手を取れば、カカシがきっと疼く体を満足させ、潤してくれる。
だけど、同時にまた以前の生活に逆戻りだ。
それはもういやだ。
幸せかと問われて、答えられない場所には戻りたくない。


「カカシ・・私、判ったの。あなたもイルカも、それぞれすごく私を愛してくれたわ。
 だけどね、私って贅沢な女なの。そして・・すごくずるい女でもあった。
 何もかも満たされないと満足しない。それを、カカシとイルカで計ったのよ。最低でしょ?」
「で・・イルカ先生を選んだってわけか・・・」
「ううん。違う。イルカとは別れたの」
「え・・じゃあ・・!」
「いいえ、カカシも選ばない。もうあの生活には戻りたくないの」

緋桜の言葉に、珍しくカカシのポーカーフェイスが崩れた。

「どうして!オレはお前になんだって与えて来たじゃないか。
 どんな贅沢もさせてあげられるし、オレの心だってお前の思うままだ。
 体は里のものだって言ったけど、お前を抱いて満足させられるのはオレだけだろ?
 オレと離れて、それがお前にも充分判ったはずだ。
 だからオレは・・・お前がイルカを選んだって平気だった。
 案の定、お前はオレの体を求めて来た。
 あの時突き放したのも、もっとオレを必要と思い知ればいいと思ったから・・・」


何て淋しい人なんだろう。

緋桜は今目の前にいるカカシが、こんなに淋しい気持ちしか持っていない事に、
今更ながら気付き、そして驚いた。
本当の愛を知らないカカシに。


「カカシ・・・そうじゃない。離れて私にも判った事があるわ。
 確かにカカシといると女王様になった気分でいられた。
 だけど、すごく悲しかったわ。他の女を当然の様に抱いて、そして私を愛してるって抱く。
 心がカラカラに渇いていった。そこに水を注いでくれたのがイルカよ。
 でも、イルカでも私の足りないピースを全部埋める事は出来なかったの。
 言ったでしょ?私はずるい女だって。何もかも満たされないと幸せになれない贅沢な女なのよ」
「緋桜・・・判らない。オレには判らない」
「じゃあカカシは、私が頼まれれば誰にでも体を差し出す女でも平気?
 魂はカカシに捧げても、肉体は違うという私を本当に愛せる?」

カカシはその言葉に愕然とした。

逆の立場など、考えた事もなかった。
自分は里が誇る忍で、ここで自分を知らない者はいない。
命と操を里に預けるくノ一が望めば、体を差し出すのに何のためらいもなかった。
だけど、どうだ。
それを緋桜がすると思うと、言いようのない黒い感情が生まれた。
嫉妬、憎悪、殺意。
いくら愛している、魂はお前のものだと言われても、それらを拭い去る事など出来るはずがない。
それを緋桜に強いていた自分は、愚鈍以外の何ものでもないと痛感する。


「あ・・・ああ・・オレは・・・!」

カカシが強く握りしめた拳を壁に打ち付けた。

「お前が去っていった理由が良く判ったよ」

聞いた事のない沈痛な声色で、カカシがぼそりと呟いた。
俯いた顔を、濡れた銀の髪が覆う。
緋桜はその奥に光るものが見えた気がした。

「カカシ・・・・・泣いてるの?」
「泣く?オレが?・・・まさか」
「だって・・涙・・・」

緋桜が、カカシの頬を流れるしずくを指ですくった。
カカシは自分で頬や眼を触り、濡れている事に初めて気付く。
そういえば言葉が発しにくい。
喉が痛い。

「うそだ。オレ・・泣いてる?」

驚いているカカシを、緋桜が抱きしめた。
その涙で、カカシが本当の愛を知ったのだと緋桜は思った。
独りよがりの独善的な愛ではなく、相手を思いやり慈しむ愛。

「カカシ、私もそれを知るまで同じ様に泣いたわ。いいのよ、泣いて」
「それを知る・・・?」
「本当の意味で人を愛する事よ。それが今判ったはずだわ」

緋桜に言われてカカシは想いを巡らせた。

緋桜を欲しいと思うが故に与え続けたもの。
それは緋桜の気持ちを考えない一方通行の愛。
けれど立場を逆転させて考えてみたら、それは相手の気持を無視した、思いやりの欠片もないものだった。

「ああ、そうか。オレにもようやく理解出来たんだな」
「カカシ・・・」

緋桜も泣いていた。
今までのカカシの孤独を想う。
人を愛する事を知らずに過ごしてきた孤独を。

「緋桜・・・愛してる。もうオレの心も体もお前のものだ。
 里に捧げるのは忍としてのオレだけでいい。
 もう、お前以外の女を抱いたりしない。オレの全部でお前を愛するよ。
 だから・・緋桜・・・帰って来てくれ」

その言葉に涙が止まらない。
何よりも欲しくて、どうしても手に入らなかったカカシが今手の中にある。

「ああ、カカシ・・・カカシ・・・・・!」

何度も唇が重なった。
心の奥の深い深い所がようやく繋がり、真実の愛を交わし合う。


「イルカ先生のおかげだね」

カカシが穏やかな声で言った。

「ええ、そうよ。イルカは最初から真実の愛で私を愛してくれた。
 彼は私達に足りないものを最初から持ってたのよ。だから私は惹かれたんだわ」
「だからオレは怯えたんだな。あの真っ直ぐな気持ちが怖かったんだ」
「幸せに・・・って言ってくれたの」
「幸せにするよ・・・いや、違うな。幸せになろう、緋桜」
「ええ。幸せに・・なろうね、カカシ」

お互いに誓い合う様にキスをする。
冷え切ったカカシの裸の背を抱きしめた。
熱がぶりかえしちゃう、とか、早く布団に入らなきゃ、なんて事を考えながらキスを交わしていた。
こんなに平和で満ち足りたキスは初めてだった。

欠けていたピースが埋まり、渇いていた心に水が注がれた。
遠回りしてたくさんの傷を作りながら辿り着いた答えの先に、ふたりの安息の地が見えていた。

 

 

 

 

ああ、二人の間で揺れ動く女心は、スウィング&スウィング。
きれいごとだけでは済まない男女の機微を切々と綴ってくださった緋桜さんに改めて感謝をvv
緋桜さんとはお互いに続きを書いていることを知らずにいました。
諮らずも、同じようなラストとは、吃驚するやら嬉しいやら(笑)
イルカ先生はやっぱり前向き漢!
そして、カカシは孤高の王子様兼ヒーロー!
唯一無二の王子と姫はいつまでもいつまでも幸せに暮らすのでしたvv

 

 

緋桜さんの素敵サイトさま
閉鎖なさいました[あせあせ(飛び散る汗)]お疲れさまでした

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最新作のみ閲覧可能です

 

 

 

 

 

 

 

 


 


コメント(3) 
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コメント 3

ねね


ケイさん いらっしゃいませ~vv

ダダだなんて、そんな…。
ケイさんはそれだけウチのイルカ先生を気に入って下さってる証拠だと思いたい(笑)
遊具シリーズ(←え?そんなんやったん?)はとても癖のあるお話だったのですが、
緋桜さんのお話でかなり救われました。
ヒロインの悩みと心情の軌跡 カカシの不器用さと孤独 イルカ先生の実直な漢らしさ すべてを網羅してくださって、もう感激しているんですよ♪

スッキリした?涙を拭いたケイさんがイルカ先生を応援してくださって嬉しいですvv
こんな失恋があったからこその「蔵のイルカ先生」だったりするんですよ(笑)
だって「今にみてろよ」って言ってたでしょ?
もう、みせられて魅せられて、ああ、虜になった私、もう止まりません(笑)



by ねね (2009-02-12 15:56) 

ねね


ナナさん こんにちは はじめまして♪
ご来訪とコメントをありがとうございますvv

まあ!緋桜さんちからいらしてくださったのね?
こんな僻地までまあまあ…本当にありがとうございます! 深謝申し上げます!
愛想の無いブログですが、少しでもお楽しみいただければ嬉しいです。
イルカ先生はね、じわ~~~っと効いてくるんですよ(笑)
いつの間にやら心に忍び込んでるの、シャランラ~♪(←あ、ゴメン;知らんか)

ナナさんもブログサイトデビューだったんですか?
親近感?嬉しいなあ~vv だって、ねねとナナって似てる(笑)
暴走も爆発も無問題です♪
というか、こちらが大暴走しますよ。5月に蔵出し誕生祭で(爆笑)
どうぞお楽しみに~v
またおいでくださいませね~vv




by ねね (2009-02-17 16:12) 

ねね



うひゃあ~~vv 
ビバ!あらふぉー!!(爆笑)



by ねね (2009-02-18 14:47) 

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