So-net無料ブログ作成
検索選択

シーソー [捧げ物]

三角関係「ブランコ」のつづきをイルカ視点で。

Valentine記念 か Nirvana記念か(笑)

花酔回廊の緋桜さまに捧げますvv

 

 

       ― シーソー  ―


 

 

退院後の彼女は、暫くは暗号解読班などの内勤に就くと聞かされた。
「そうですか」
と オレは答えた。
当たり障りの無い、まるでそんな事には興味がないというような味気ない返事を装う。
「頃合をみて組手の相手をしてやる心算だ。折角の身体が鈍っちまったら勿体無いからな」
ガイさんはそう言うとジョッキを空にして、店員にジェスチャーでお替りを頼んだ。
「なあ、イルカよ」
ごつい温かな手がオレの肩を掴む。
「人には其々、立ち位置というか器というか…そういうもんがあるさ。おまえはおまえの
器を磨け。おまえしか持ち得ない力を大切にしろ。いつか俺にその底力を見せてくれ」
「…押忍」
「なに、明けない夜はないぞ。さあ、呑め! 今夜はとことん付き合うぞ。
親爺さん、ハツとつくねを頼む。あとサラダ大盛りで! ビタミン摂れよ、イルカ!」
これがこの人流の励まし。
カウンターの向こう側の炭火から立ち上る煙が目に沁みる。
オレはありがたくて、情けなくて、涙が出そうになった。

 

日常が流れてゆく。
アカデミー 会議 受付 任務 飲み会・・・・・


暫く里内に居るとなると、顔を合わさずにはいられまい。
実際、彼女が資料片手に仲間達と談笑している場面に何度も遭遇している。
そのとき、オレはいつも思う。
みつめていたい。
近寄れなくてもいい。
ただ、見守っていたい。


一度だけ、カカシさんに会った。
任務を終えたカカシさんは、返り血まみれで終了間際の受付に現れた。
「任務、お疲れ様でした」
声が硬くならないように、顔に笑みを貼り付ける。
カカシさんは、うんと頷くと、にっこり笑った。
口布で表情が読めないものの、何か言いたそうな素振りだったけど、何も言わずに出て行った。
あのあと、彼女に会いに行ったのだろう。
いや、帰ったというべきか。
どっちにしろ、オレにはもう関係のないことだった。

 

彼女はあれから窪地で泣く事はなかった。
どうしてか、あそこへ行くと会えるような気がして、足が向いてしまう。
カカシさんが改心したのか。
それとも、もっと良い泣き場所を見つけたのか。
オレには彼女と面と向かって何かを尋ねる度胸などなかった。

 

火影室へ資料を届ける途中、廊下でアスマさんとすれ違った。
「おう、イルカ。今夜ちょっと顔 貸せや」
「あ、はい」
時間と場所を告げられて頷く。
どんよりとした灰色の雪雲が近づいていた。

「この猪口ちっせえな。イルカ、コップ酒にするか?」
「いえ、これで充分です」
そうかと呟いたアスマさんは、アスパラガスだけをオレの皿に移した。
「好き嫌いってのは、治らんもんだな」
アスマさんの馴染みの店で、酌をし合って夜が更けていく。
何か、話があっただろうに。
アスマさんは、ただ、オレに酒を勧める。
上等の酒は、酔い方も違うようだ。
この数週間の緊張が少しずつ解れていくような気がする。
女将の見送りにアスマさんは慣れたように片手を上げた。
ぼたん雪が空から落ちてきた。
次第に白んでいく夜道を歩きながらアスマさんがぽつんと言った。
「正面から勝負をしかけてみるのも手のひとつ。将棋とおんなじだ」
オレは返事ができなかった。

 

 

 


最近、子供の頃から何度も繰り返して見ていた夢の内容が違ってきた。
今までは彼女が乗るブランコを押してやる夢だったのが、シーソーに乗っている夢に変わった。
ぎったんばっこん ぎったんばっこん 上に下に 何度も繰り返す。
尻の痛さや、ささくれだった板の棘を感じるほどのリアルさだ。
なのに相手が解らない。
向い側に乗っている子は一体誰だ?


ベッドに横たわり、考える。
夢ってなにか意味があったよな? 
深層心理を表すとかなんとか。
浅い眠りの中、オレはまた夢を見ているようだった。

 

 

受付当番が終わろうかという頃、紅班が帰還した。
「お疲れ様でした」
報告書を受け取るオレの手を紅さんが掴んだ。
「顔色、良くないわね。イルカちゃん、駄目。そんなんじゃ 受付、失格」
人差し指を立てて、紅さんがそう言った。
「え?」
小刻みに左右に揺れる人差し指を凝視しながら、オレは何を言えばいいのかわからなかった。
「心此処に在らず よね?」
紅さんの指が「non non non」と言っているようだった。
「駄目よ。受付の色男がそんなんじゃあ、駄目」
「仰る意味がわかりません」
ふふんと紅さんが妖艶に笑った。
「今夜の受付、私でお終いでしょ? 着替えてらっしゃい。下で待ってるから」

連れて行かれたのは、里にこんな店あったのかと思うほどの瀟洒なバーだった。
注がれた発泡ワイングラスを合わす。
オレに向かって微笑みながらグラスを傾ける紅さんを、つくづく美しいひとだと思う。
その綺麗な指でオレの髪を解いて、手櫛で梳かす。
「あら、髪下ろしたら、随分感じが変わるじゃない。うふふ、可愛い
「や、からかわないでくださいよ」
紅さんが笑うと華が咲いたようだ。
周りのデート中の男たちまでもが紅さんを見ている。
連れがオレなんかでいいのかと居心地の悪さを感じてしまう。
そんな男たちを一瞥すると、紅さんは生ハムに添えてあるオリーブを口に運んだ。
男たちの溜息が聞こえてきそうだった。
「恋をなさいな。新しい恋を」
それしかないと断言するような口調だった。
「イルカちゃんは、昔から自覚がないのよ。素敵と思ってる娘は沢山いるわ。
だって、アンタはこんなにハンサムで誠実なんだもの」
とても優雅にオリーブの種をナフキンに吐き出す。
「それが無理なら、諦めるのを止めなさい。こんな女々しいイルカちゃんを見るのは嫌だわ」

 

ガイさんは立ち止まれという。
アスマさんは闘えという。
紅さんは進めという。
里が誇る上忍に入れ替わり立ち代り助言をくれるとは、余程ガキだと思われてるんだろうと腹が立つ。
それともそれほど、傍から見た今のオレは頼りなく情けないんだろうか。

 

 

 

施錠当番で各教室を回っていると、帰ったはずの子供たちのひそひそ話しが聞こえてくる。
「こらーっ! おまえたち今何時だと思ってる? 家の人が心配するぞ。早く帰りなさい」
輪になっていた年長の男子が5人、オレを見るなり顔に「やばい」と書いてあるのが見て取れる。
「どんな悪巧みの相談だ?」
ナルトの、自分の子供時代を、懐かしく思い出す。
笑いを噛殺しながらと歩み寄ると、5人の顔が引き攣った。
「な、なんでもないよ!なあ?」
「うん!悪巧みなんてしてないよ、先生」
口々に首を横にぶんぶん振りながら慌てるなんて、肯定以外何物でもない。
隠し持っていた小箱を取り上げると、5人の男子の悲鳴が響いた。


しょげかえる5人がぼそぼそと話した。
バレンタインデーのチョコレートだそうだ。
女子からではなく、男子から、逆チョコというのだそうだ。
前日に机の中に入れて帰るか、正々堂々と面と向かって告白して渡すかどうか
意見が分かれていたそうだ。

「イルカ先生、先生はどう思う? 先生だったらどうする?」
「男らしく、直接渡すよな? なあ、先生?」
「そんなの、ドンビキされるって。そう思うだろ?先生?」
「違えーよ。目を見て告白するのが男ってもんだよ。先生、そうだろ?」
「そんなことして、断られたらどうすんだよ? 次の日も学校あるんだぜ?」
「そんときゃ、そん時だよ! 男なら一発勝負!」

耳が痛いとはこのことだ。
穴があったら入りたいとはこんな感じなのかもしれない。
負うた子に教えられとは正にこういう状況に違いない。

「そりゃあ、手渡した方がいいと思うぞ。本当に好きなら想いはダイレクトに伝えないとな」

男子たちがイエーイ!ヤリィー!などと奇声を上げた。
「イルカ先生、ありがとう! お蔭で勇気が出たよ!」

勇気を貰ったのはこっちの方だ。
「おう、気をつけて帰れよ。明日、頑張れ!」
動揺し狼狽していた子供たちは一変し、元気に帰って行った。
子供はエネルギーの塊だ。

よし、オレも。 頑張れ、オレ。 

 

 


バレンタインの翌日、任務帰りに式を飛ばす。
すぐに返事が戻ってきた。
あの窪地で落ち合う。
小箱と想いと携えて。


少し筋肉が落ちたのか、彼女は以前より小さく見えた。
困ったような恥ずかしそうな笑みを浮べている。
オレは走り寄って、まっすぐにその眼をみつめた。
「久しぶりね。元気にしてた?」
「はい。貴女も、元気そうでよかった」
彼女が黙り込む。
オレも黙って彼女を見下ろした。
睫毛が震えている。
「会いたいと思ってたの。でもリハビリやなんかで忙しくて。あの…ごめんね。イルカ君」
「謝らないでください」
「だって…」
言葉を探しているようだった。
「とても、心配かけたでしょう?」
「ええ、とても心配しました。どうにかなっちまうかと思うほど」
本当に心配した。
あのまま目覚めなかったらオレは生きていけないと思っていた。

「はじめにね」
と彼女が言った。
「黒と銀が見えたの。二人の声が聞こえた。ずっと名前を呼んでくれてたでしょう?
握ってくれてた手のぬくもりも、全部覚えてるよ」
丁寧に言葉を選んでいるのが解る。
「なのに、私…」
「いいんですよ。それでいいんだ」
小箱を差し出す。
不思議そうな顔でオレを見上げる彼女の手を取って、包み込ませた。
「受け取ってください。チョコレートです」
深呼吸して、腹に力を蓄える。
じっと小箱をみつめる彼女に伝えよう。

「貴女のことが好きでした。ずっと貴女を愛していました」
自分でも驚くほど澄んだ落ち着いた声が出ていた。
彼女の瞳に涙が浮かぶ。
「もっと早くに伝えるべきだったのかもしれない。少なくとも貴女とカカシさんが出会ってしまう前に。
過去形で伝えなくて済むんなら、これは昨日のうちに渡してましたよ」
「イルカ君、私…」
「貴女のことを好きでよかった」
オレは心の底からそう思った。
「オレは貴女の真実のひとじゃなかったんだ。ただそれだけ。オレこそ貴女に相応しいなんて
思い上がったときもあったけど、違ってた。オレはオレの真実のひとを探すよ。
だから気兼ねとかそういうの、止してください。カカシさんと二人で、世界中の誰より幸せになってください」

ああ、言えた とオレは思う。

彼女は零れる涙を指で拭う。
「イルカ君」
しゃくりあげそうになるのを我慢している彼女を見るのは辛い。
「イルカ君がいつか真実の人に出会ったときは…」
無理に笑う彼女が幼い頃の姿と重なり、胸が詰る。
子供の頃から、彼女が泣くのが一番嫌だった。
彼女にはいつも笑っていて欲しかった。
「すぐに好きだと言わなきゃ駄目よ。他の誰かに取られないように」
「解ってますよ。二度と同じ失敗はしない」
オレも笑って、アカデミーの子供にするように彼女の頭に手を置いた。
やわらかな髪を掌に感じながら、とても穏やかな気持ちになった。
「送って行かなくていいね? カカシさんが近くまで来てる」
彼女は頷き、オレをみつめる。
「チョコ、ありがとう」
「オレの方こそ、ありがとう。さようなら」

 


今日はNirvana  涅槃の日。
オレの初恋が本当に滅した日。


さようなら ありがとう どうかしあわせに

 

少しだけ春めいた風を受けながらオレは決心する。

「よし! 今にみてろよ!」

 

 

 

 

 

 


閉鎖なさいました[あせあせ(飛び散る汗)]お疲れさまでした

banner.jpg

最新作のみ閲覧可能です

 

 

・・・・・かくして、イルカ先生は恋多き漢になるのだった(爆)
真実のひとだと思ってたのに違ったなんて人生最大の大失恋!
the  smiths のLasut night I dream sombody loved meを彷彿させます。

昨日の夜、誰かがぼくを愛してくれる夢を見た。
本当に抱きしめられてるみたいだった。
望みもないけど害もない。
間違い警報がまた鳴る。
だから、教えて。
これで最後まであとどれくらい?
本命が来るまであとどれほど?
古臭い話だよね、知ってる。
でもずっと続いて行くんだ。 

 

      

 

 


コメント(1) 
共通テーマ:アニメ

コメント 1

ねね



ケイさん こんにちは♪
ご来訪とコメントをありがとうございますv

オォ ノゥ…ですか。
どうしよう?ケイさん、怒ってる?
イルカ先生が可哀想で怒ってる?

メールします!言い訳メールを!




by ねね (2009-02-12 10:46) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。