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それは腕の中に 如月ケイさまより [素敵な頂き物]

如月ケイ様より戴きました。

大人表現抜きのショートバージョンです。
今月末で蔵は閉める為、態々編集してくださいました。
我侭を聞き届けてくださったケイさんに改めて御礼申し上げます。
ケイ様、超素敵な夢を本当にありがとうございます[揺れるハート]

頂き物なのでナルサーチに更新の登録できないのが、残念でなりません。

ヒロインさんは、地質学者 翡翠ミヤビさん 

頼り甲斐のある大人漢イルカの魅力をご堪能ください。
あ、勿論いつものあの萌えポイント、オトコの純情も…(笑)

名前変換は出来ません。悪しからず、ご了承ください。

 

 

 

 


「…来るとこ間違えてんじゃねぇのかい、イルカ先生。
 こんな別嬪さん連れて何もウチのラーメンはねーんじゃねぇの、がっはっは」

「私が食べたいってお願いしたんです。ねぇ?イルカさん。」

「は、ハイ。」

「はっはっは、イルカ先生何をそう硬く…もなるよなぁ、こんな可愛い人の前じゃぁよ。」

 


  それは腕の中に 


 

…イルカは黙って鼻の頭の汗を拭いた。
顔が赤いのはラーメンの熱さと、テウチがイルカの本心をズバリ言い当てた恥ずかしさからだった。
そんなイルカに毛ほども気付かず、スープの残った丼を差し出すミヤビ。


「うっふふ、そんなこと言っても何にも出ませんよ。…替え玉お願いします♪」

「おお、褒めたら食欲が出たってか?ぐははは…」


威勢のいいネェちゃんだぜ、とテウチは麺を茹で始めた。

イルカは呆けた顔でミヤビを見た。
そんなイルカに、ミヤビは肩をすくませ言った。


「…ごめんなさい、これくらい食べないと、もたないんです。」

「!…え、ああ、違うんです。美味しそうに食べるなぁって、感心してたんです。」


イルカは咄嗟にでまかせを言った。
アヤメはイルカのコップに水を注ぎ足してやりながら、フフンと訳知り顔だ。

実は食べてる最中の彼女の顔など、恥ずかしくて見ることも出来なかったのだ。
…自分の下心を見透かされそうで。

ほんの一瞬…髪を耳にかき上げながらラーメンを冷ます横顔をチラと見ただけで、
イルカは味が分からなくなってしまうほど緊張していた。


ああ眼鏡が曇っちゃった、とミヤビは美しい素顔を見せる。

目頭の汗を押さえる仕草や、しばたく長い睫…
薄々気付いてはいたが、初めて直に見るその眼差しはイルカの心を揺さぶった。

吸い込まれそうな艶やかな漆黒の瞳…

薄化粧に汗…

イルカはごくりと唾を飲んだ。


「やだ、お化粧崩れてません?ああ、暑い。」


そう言ってハンカチで顔を扇ぐミヤビに
イルカはああ、ともうう、ともつかない曖昧な返事を返すことしかできなかった。

もはやその微笑みは扇情的でしかない。

…その瞳に心を射抜かれてしまったから。


 


 

 

木の葉の夏は、キッチリ暑い。

夏休みにも関わらず、イルカは今日も里中を駆け回り忙しかった。
そんな中、緊急に任務が下った。


「うみのイルカ、地質学学会より訪れる調査員の補助、1週間!どこへ行くにも共をせよ。…良いな?」


良いなも何も、あなたの命令は絶対です、5代目火影様…
プール監視やアカデミーの宿直の方が良かったなどとは、口が裂けても言えない。

 

 

 



「よろしくお願いします、翡翠ミヤビと申します。」


指定の場所に来てみれば、夕日を背に小柄な女性が佇んでいる。

ここは火影岩の上にある展望台だ。
イルカはごく簡単に自己紹介を済ますと、今後の予定を尋ねた。


「…お聞きかと思いますが、ここが昔海だったことを証明したいんです。
 到着が遅れた分、今夜は予定を変更して、徹夜で調査するつもりです。…よろしいでしょうか?」


…こんな若い女性が調査員とは。自分とそう変わらないじゃないか。

イルカは心の中で驚きながらプリントを受け取った。
初日から徹夜も厭わず、明日からの予定表を調査、調査、調査…の文字で埋め尽くすとは、
その情熱はいくばくか…予め渡されていた予定表より更に密度が濃い。

イルカは逆に心配になった。

この見るからに普通の女性が、こんなハードスケジュールをこなせるんだろうか。


「私のことは気にしないで下さい。どこへでもお供します。」


そう答えると、眼鏡の奥の瞳が安心したようだった。
地味な作業着にヘルメットを小脇に抱え、小さな身体にリュックが重そうだ。
持ちましょうかと言う間も無く「では早速行きましょう」と
火影岩内部に降りて行く彼女に、アタフタとイルカはついて行った。

 

 


イルカはあくびを噛み殺した。

彼女の方がよっぽどタフだ。

昨夜、ミヤビは微妙な色合いの断層を識別し、たんねんに壁面を観察していった。
暗いところではヘッドライトを頼りに、狭いところへも潜って行った。

イルカは言われるままにサンプルをケースに仕舞い、場所や日時を書き込むのを手伝った。
そうする中で、それまであまり関心のなかった地層というものに面白さを感じずにはいられなかった。

空が白み始める頃、彼女はがっかりした顔でヘルメットを脱ぐと言った。


「…一度宿に戻って仮眠をします。うみのさんもどうぞ休んできてください。今日はお疲れ様でした。」


今日は、といってもこれで終わりではない。
5時間後にはまた調査だ。
これから帰って、風呂に入って、食事…サンプルを整理して、次の下調べをして…

彼女はおそらく寝ないだろう、イルカは直感的にそう思った。


「あの…良かったら、これどうぞ。一粒で300馬力ですよ」


イルカはらしくない冗談を言い、ミヤビの手に兵糧丸を乗せた。


「食事を取ってから飲んでください。睡眠不足を少しでも補えますから。」

「…あ ありがとうございます、うみのさん…」


弱い朝日が差し込む岩穴で、彼女は初めて笑顔を見せた。

無味乾燥な洞穴に、花が咲いたようだった。


「う、うみのさんはやめてください、皆俺のことイルカって呼ぶんです。」


ぽりっと鼻を掻きながら喋る時、それはイルカが照れている証拠だ。

二人は土埃だらけの顔を見合わせ、笑った。

 

 

 


イルカは定刻に、リュックを背負って現れた。
宿から出てきたミヤビは不思議そうに首を傾げる。


「うみ…いえ、イルカさん、その荷物はどうしたんですか?」

「ハハ…少しでもお手伝いできればと思って、色々持ってきました。」


雨天時に備えての装備、野外で料理ができるように調理用具一式に、食材と…

指折り数えながら何を持ってきたのか話すイルカに、ミヤビはくすりと笑みを漏らした。
とにかく調査一色にするつもりだった。
証拠を持ち帰る体力だけ残して、調査に全神経を注ぎこむ。
こんな風に切羽詰っているミヤビにとって、イルカの大らかさは拍子抜けだった。


…なんて楽しそうなんだろう。
まるで、これからキャンプに行く子供みたい。


イルカのがっしりした体つきからは想像もつかない可愛らしさ。
愛嬌のある笑顔に、ミヤビも自然とほぐされる。


…そうね。肩肘張らず、自分を信じて行かなきゃね。
まだ日にちもあるんだもの…


大小のリュックが歩いているように見えるふたりの後姿は人目を引いたが、
ミヤビもイルカも、全く気にしなかった。

 

 

 

 


2日目、収穫無し。

3日目、同上。

4日目、……

ミヤビは日を追うごとに焦りの色を濃くしていった。
少ない口数が一層減り、イルカは気を揉んだ。

まるで何かに憑かれているようだ、とイルカは思った。

5日目、そろそろ結果を出さないといけない。
ミヤビは真夏の山を黙々と歩き、断崖に登り、丹念に調査した。

 


下でイルカが用心しながら、地層の壁面に張り付くミヤビを見守っていた時のことだった。

ミヤビがくらりと頭を揺らしたかと思うと、急な傾斜から足を滑らせた。
難なくキャッチして見れば、熱中症寸前の状態だった。


「ミヤビさん、ミヤビさん!お水を飲んで…そう、ゆっくり…」


木陰に寝かせると、イルカは真っ赤になって謝った。


「…ごめんなさい、胸元を開けます!」


謝らないでもいいのに…そんなこと…
律儀ね、イルカさんは…

暑さでボーッとした頭に、ヒンヤリしたタオルが乗せられる。
ミヤビは気持ち良さにウットリと目を閉じた。


「…イルカさん、ありがとう…」

「ミヤビさん、今日は水分をあまり取ってなかったでしょう…ごめんなさい、気付いてあげられなくて…」


…私がいけないのに。
結果を急ぐあまり体調管理に気が回らなかった。
いい大人の癖に、意地になって…。


「……どうして」

「は」

「…どうしてそんなに優しいんですか」


つ、と眼鏡の奥から涙が伝い落ちた。


「私…国土地理省の上役達をあっと言わせたくて…あの頑固親父たちったら、
 私の持論はあり得ない、絵空事だって笑うんです。」

「……」

「それで意地になって、私…絶対証拠を持ち帰ってやる、って…でもこれじゃ…」

「ね…ミヤビさんそんなに泣かないでください。俺は…俺もここが海だったと信じてます。
 まだ時間はあります、なんなら俺が探して来ますっ。だから…」


額に載せたタオルで涙を拭ってやるイルカだった。


「…そんなに泣いたら…脱水症状起こしちまう。」

「……」


…まじめな顔で冗談を言うのが得意なのだろうか。
イルカの真っ直ぐな視線が心に痛いほど嬉しい。

ミヤビは、自分の見栄が急にちっぽけなことのように思えてきた。


「何かヘンな事言いましたか、俺…」

「いいえ…うくく…アハハ…」


泣き笑うミヤビの胸が揺れて、イルカはこれ以上正視していられなかった。


俺はなんて不器用な忍なんだろう。
彼女への想いさえ、隠し切ることが出来ない…

こんな短い間だが、真剣な後姿や横顔を見ている内にすっかり惹かれてしまい、
果ては抱きたいとまで願っている自分に呆れるイルカであった。


「…ミヤビさんは少し休んだ方がいい。何か元気が出るものを…
 そうだ、俺のお勧めの店があるんです、後でそこへ行きませんか?」

「…はい。是非…」

 

 

 

 


 

「イルカさん、自分で払いますって」

「いや俺が!ミヤビさん、美味しいって言ってくれて、嬉しかったし」

結局譲らぬイルカが支払いを済ませたところで、イズモに捕まった。


「火影様より伝令です。国土地理省より、調査期間を1週間延長せよとのことです。」


せっかく笑顔が戻ったばかりだというのに、その名が出るとミヤビは顔を曇らせた。


「バカにしてるんだわ…」

「…ミヤビさん」

「どうせ何も出ないって、笑ってるんだわ…お情けをかけたつもりで、私を…」

「元気を出してください、何事も先駆者は叩かれるもんです。地動説を説いた人はどうです?
 天然痘を根絶する方法を考えた人は?…信じましょう、きっと見つかります!」

「……ハイ。」


…俺に出来ることはないだろうか。
俺はあなたの笑顔のためなら、山をひとつ吹っ飛ばしてでも証拠を掴みたい!

イルカは宿の前までミヤビを送ると言った。


「今日はラーメン付き合ってくれてありがとうございました。
 …延長はチャンスですよ、ミヤビさん!その…俺がついてますからっ。明日もがんばりましょう!」


イルカは嬉しかった。
まだもう少し一緒にいられる、そう思うと胸が躍った。

 


今日は大事をとって、夜間の調査はイルカが半ば強引に中止した。
ゆっくりぬるい風呂に浸かり、仕上げに水を浴びたにもかかわらず、
太陽に晒した身体はまだ熱を持っていた。

木の葉の夜景を望みながら、ミヤビはイルカを想っていた。


…抱きかかえられた時の、安心感。
少し慌てながら衣服を緩める、正直な指。
いつも照れたような、精悍な笑顔。


…ふと何かを思い出したように立ち上がると、
ミヤビは新しい作業着を着込み宿を出た。

 


…甘えちゃだめ。だめよ。
いくらあの人が親切だからって…

 


ミヤビは明日調査する予定の崖に向かった。
獣道を分け入ると、なにやらがりがりと引っ掻く物音。

熊が出ることもあるとイルカが言っていたのを思い出す。
思わず足が止まる。引き返そうか。いやでもせっかくここまで来たのに…


「…ミヤビさん!?どうしたんですかっ、こんな遅くに!」

「きゃぁっ!!」


カンテラを持ったイルカが繁みから現れた。


「イ、イルカさんっ!イルカさんこそ、何してるんですか?」

「…何って…そりゃ…実はですね…」


イルカはポケットから貝殻を取り出すと、ミヤビに見せた。


「アカデミーの子供達に頼んでおいたんです。貝殻が埋まってる所を知ってたら、教えてくれよって。」


それがここだったんです、とイルカは口ごもった。


「よくこんな夜道を来られましたね。…っと、そうだ!見つけましたよ、ミヤビさん!」


こっちこっちと手を引くイルカについて行けば、今まで見たことの無い色の地層に、
夢にまで見た証拠品の数々があった。
イルカはその帯をカンテラで照らしながらミヤビを見た。


「…どうですか。正解ですか。」

「…ええ…本当に嬉しい時って、言葉が出ませんね…」


イルカは黙って頷いた。


「…見つけた」

「見つけましたね」

「…ハァ…」

「おめでとう、ミヤビさん。あ…」


イルカはゴソゴソと採集セットを取り出すミヤビの肩を叩いて急かす。


「雨ですよ、ミヤビさん!採集は明日にして…ああ、もうっ」


ふたりは濡れ鼠で手近な洞窟に駆け込んだ。
サンプルをしっかり抱きかかえて、ミヤビはこの上なく満足そうだ。


「通り雨でしょう。服を乾かして…ください、ミヤビさん…」


イルカは忍であることを一瞬忘れて魅入った。

ミヤビはまるで海からあがったばかりの人魚のようだった。
頬は輝き、宙を見つめている。

湯上りの肌が雨で萌え立ち、イルカには耐え難い芳香を放つ。
張り付いた服はこれ以上見ていたらきっと気が変になる。

イルカは起こした火に集中することにした。

ふいにミヤビがイルカの手を取り、強く握った。


「イルカさん。…本当にありがとう」

「…う…あ…イエ、そんな」


下心たっぷりの狼狽は、ミヤビにはイルカ流の恐縮としか思われていないらしい。


「あなたのご親切は忘れません…あれ、イルカさん、顔が…」


雫のたれる髪や泥まみれの顔を、ミヤビは手を伸ばしてタオルで拭くのだった。


「…や、やめてください…そんな風に優しくされると、俺…」


パチリ パチッ  

火の粉がはじける。


「い…いいように勘違い、しちまうから…」


真っ赤になって下を向いてしまったイルカ…

ミヤビの中でも、何かがはじけた。

イルカさん、あなた、私のことを…?
それであんなに一生懸命に…?


…あなたったら…人には優しい癖に、優しくされるのは慣れてないのね。
なんてお人好しなの。

…イルカさんを持って帰れたらどんなにいいだろう。
そうできないのが、とても残念…

ミヤビはタオルを持つ手を引っ込めて、胸の前でギュッと握り締めた。


「か、勘違いじゃないって言ったら…ど、どうしますか」


やっとのことでそう言うと、顔を背けるミヤビだった。
イルカがハッと息を呑むのが分かった。


「…私 あなたみたいに強くて優しい人、見たこと無い…」


長い沈黙の後、自分の頬をつねるような気持ちでイルカは尋ねた。


「…俺だけの一人相撲じゃ…ないんですか」

「…何度も言わせないで」

「!…ごめんなさい…」


ミヤビは背後からイルカにきつく抱きしめられた。
イルカは、雨と土の優しい匂いがした。


「あなたの力になれて…想いまで通じて…俺、すげぇ嬉しい…」


まさかのリアクションに驚かされ、ついムードの無いことを聞いてしまうミヤビだった。


「あ、あ、あの…学名にイルカさんの名前、使いたいんですけど、いいですか?」

「とんでもない!何を言ってるんですか、勿体無い。
 ミヤビさんの名前がっつりつけて、ジジイ達をぎゃふんと言わせてください!」


顔を覗き込むと、ミヤビの眼鏡は自身が上げる蒸気で真っ白だった。


「……はは、眼鏡が」

「…ええ、ウフ…曇っちゃった…」


どちらからともなく眼鏡に手をかけると、イルカは言った。


「…あなたは、素敵だ」


首に口付けんばかりに甘く囁かれ、ミヤビは思考まで真っ白になってしまった。
イルカはミヤビを自分の方に向かせた。

ミヤビのぼやけた視界に、赤い顔のイルカが映る。

ふたりは雨で凍えた唇を重ね合わせた。
すぐさま侵入してきたイルカの舌に、ミヤビは身を硬くした。
舌は、ミヤビにとってはセックスの象徴そのものだった。
イルカにとってもそれは同じ…思いの丈を、舌を存分に動かすことで代弁した。

性急な求めに戸惑い、ミヤビは胸を押し返そうと身を捩った。
その気配を察して、イルカは逃がすまいと締め上げる。

角度を変え、イルカは震えるミヤビの唇をあらゆる方法で味わった。
ミヤビの舌はイルカに追い詰められ、奥のほうでイヤイヤをしている。


…イルカさん!こんなのだめ…

息をさせて…

私をそこまで想ってくれてるの?

ちょっと待って、これじゃ私が壊れてしまう…!


「…ア…もう…やめて…、イル…カさん」


腕の中で喘ぐミヤビに、もうイルカは歯止めが利かない。


「…だめです。まだ離さない」


ミヤビの想像を遥かに超えたイルカの熱い想いは
キスに集約され、それはいつ終わるとも知れなかった。


イルカの腕の中で、切れ切れの声が生まれては消える

イルカは心の中で何度も叫んだ

好きだ、と…

 

 

 

 

 

 


『…資料が揃い次第、戻ります。』


さぁ、地理省のオヤジ達はどう思うだろう。

ミヤビは昼間撮影した地層の写真と解説をつけ、手紙を出した。

今となっては、してやったりという気持ちも無くも無いが、
それよりイルカと離れ離れになることが寂しい。

もう逢う口実も無い…
戻れば暫くは忙殺されるだろう。
午後、新たに撮った写真が出来上がる。採集も済んだ。レポートもまとめた。

あとは、イルカさんにさよならを言うだけ…


正午近くなり、じりじりと暑くなってきたのでミヤビはエアコンのスイッチを入れた。
そろそろ散らばった荷物を纏めようか…


コンコン 


ノックの音に心臓が跳ね上がる。否応無しにイルカを想像してしまう。
そんなわけ無い。今日は午後に挨拶に行くだけだもの。

女将さんが、伝票でも持ってきたんだろう。

 

ところが、私の期待通り、イルカさんがそこに立っていた。


「こんにちはミヤビさん、あの…すみません、押しかけてきて…でも、その…」


何にも言わないで、逢いたかったのは私も同じ…


私は戸を閉め、抱きついた。イルカさんも、黙って私を抱きしめた。
シェーブローションとミントの香りがする。
いい匂い…

イルカさんを部屋に入れ、お茶を出そうとしたら止められた。


「…それより…夕方、発つんですって?急じゃないですか」


座卓に座ったイルカさんは私の腕を離そうとしない。
触れられているところが、痺れる。


出張旅費、監査が厳しいの…うふ、ケチですよね。」

「…もう一日くらい、居ればいいのに…」


イルカさんは痛いくらい私を見つめる。

…外で蝉が煩い位鳴いているなぁ。

私がはっきりとした意識でものを考えたのは、これが最後だった。

 


気付けば、私達は畳に転がり、絡み合っていた。

 

 

 

 

「…あなたの腕の中にも海があるって、たった今発見したところなのに…」

「これ以上俺を気持ち良くさせないでくれよ…海だって荒れることがあるんだから。」


汗が引くと寒いなと笑い、イルカさんは毛布を持ち出してきて、一緒にくるまった。


「…手紙、書くから」

「…ああ、俺も」

 

あなたこそ海だ…

俺を温かく迎えて 揺れて 

時の移ろいと共に艶かしく色を変える

…もう一度とせがんだら

君はきっと受け入れてくれるんだろうな…

 

 

 

 

 

「待っててね、イルカさん。学会をあっと言わせてやるから!」


イルカは痛む胸を押さえ、はぁぁ、と大きな溜息をついた。
そう言って意気揚々と木の葉を去って行ったミヤビ。

俺の身体はまだ君をこんなに覚えているのに。
イルカの芯は夜毎ズキズキと疼いた。

…来年会おうと約束した日が、あまりにも遠かった。

 

 

 


…でぇ、このことからここは昔海だったということが分かるな?地殻変動の力というものは…


今日もイルカは子供達に教鞭をとる。
相変わらずの生活にただひとつ、1年前と違うことがあるとすれば、教科書の内容が一部変わったことだった。
木の葉の地は、太古の昔海であった、と…
この新しい事実を教える時、イルカはいつも胸が甘く痛む。

翡翠断層…ミヤビが勝ち取った、発見の証…。

幾度となくなぞった、教科書の文字。
…でも今日は、喜びに胸が高鳴っていた。

イルカは半信半疑に手紙を取り出し、読み返す。

今日も、約束の日がやって来たとは思えないような変わらぬ一日だった。
もう日も暮れようとしている。彼女は本当に現れるのだろうか。

予定は未定…案外、明日になるかもしれない。

晩飯、どうしようか…
めんどくさい。一楽にでも行くか…


道を変えようと踵を返した。
すると、懐かしい声がイルカを呼び止めた。
その声の主は夕日を背にこちらを向いて立っている。


「…イルカさん。元気だった?」


イルカは静かに近づいていった。


「…眼鏡…やめたんだな。」

「うん。イルカさんとすぐキスできるように。」


可愛いよ、とクスと笑う。

手を取り合い、目を見交わしながら二人の姿が街角に消えていった。


「私ね、独立したの。これからはフリーの研究家よ。居たい所にずっと居られるのよ。
 …最も、家を空けることも多いけど。」

「…やったな。」

「…うん。」

「…なら、俺んとこに来いよ。…ちょっと狭いけどな。」


鼻傷を掻きながらイルカは微笑んだ。


「おめでとう、ミヤビ。」

「…イルカさん、すき。大好き…」

 

 

 

…ふたつの海が溶け合い、まどろむまでにはまだ十分な時間があった。

ほら、やっと月は昇ってきたばかり…

 

 

 

 

 

大好きな如月ケイ様のサイトはコチラから

mybannerb.jpg

マナーを守ってご訪問をお願いします。
是非、イルカに名前を呼ばれにいらしてね。

 

 

 

 

 


 

 ヒロインのミヤビさんは、今まで男社会で一生懸命頑張ってきた女性、
なめられないよう物凄く頑張ってきたんだと思います。
イルカがサポートしてくれたら、何だって出来そうですね!
「あなたは素敵だ」
なんてシンプルで素直な告白…イルカっぽい。
惚れ直しました!
最後の二行がやさしい余韻を残してくれて大好きです。
ミヤビの潮が満ちた時、月も満ちるのでしょうね。
ケイさんに心より感謝申し上げます[揺れるハート]

 

 

 

 


 


コメント(2) 
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コメント 2

ねね


ケイさん こんにちは♪

縮小版もありがとうございます!
早速アップさせていただきました。
ハイ、私、ご飯が出来上がったら片付けは後回しにして先に食べるクチです(笑)
堪え性がなくてゴメンナサイ。でもほんっとに素敵な夢なんだもの、
少しでも早く世に出したかったの!
また、サイトの方へ遊びに参りま~すvv
サーチ、やっちまおうか…




by ねね (2008-06-16 12:44) 

ねね


金鳳花さん♪
蔵にご来訪とコメントをありがとうございますvv

おおーっ!ぐっとキてますか?
イルカ先生が守備範囲ではない金鳳花さんにぐっとイケば
私の「大人漢イルカ普及作戦」は成功です(笑)

いつも思うのですが、カカシやゲンマの夢サイト(not イルカ)のマスター様が
拙ブログにお越し戴くだけでも恐縮なのに、コメントを残してくださるなんて
本当に嬉しい限りです。 ありがとうございます。

来年も蔵出誕生祭が開催できればいいなあvvと思っています。
こちらこそ これからも どうぞよろしくお願い申し上げます(お辞儀)



by ねね (2008-06-30 13:11) 

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