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栗 [SS]

本日の妄想:イルカ先生は栗が好き。
できれば栗ご飯、食べて欲しい。
の妄想駄文です。 私がイルカ先生と栗食べたかっただけ(笑)

 

    

       ―栗―

 

「でっかい栗だなあ!こんなに沢山?」
大好きな笑窪を浮かべてイルカさんが目を丸くした。
「うん!今年は豊作なんですって。昨日の任務先の農家の方が分けてくだすったの」
「またDランクだったのか?」
「穫り入れの時期だもの、下忍の子たちと一緒にね。」
「まあ、それだけ里が平和ってことだがな」
微笑むイルカさんに促されて、家にあげてもらう。
休みの日はこうして行き来するようになって随分経つけれど、この瞬間は未だに少し緊張する。
小さな声で「お邪魔します。キッチンお借りします」と呟いた。

時々 中に潜む虫にぎょっとしながら皮を剥いたものの、どうしようかと考える。
「栗、どうやって食べますか?」
蒸した方がいいのかなあと思いながら、コーヒーのいい香りの方へ首を巡らせた。
「ん? 栗は好きだからな、なんでもいいよ」
なんでもいいっていうのが一番困るのよ。
淹れてもらったコーヒーを飲みながら、私の食べたいものとイルカさんの食べたいもの
絶対違うものなのよねえ と思案する。 

秋晴れの空から舞い降りた小鳥が窓を突く。
「すまんな、ちょっと行って来る」
イルカさんはベストを着込むと額宛を巻いた。
見送る為に玄関先までついて行くと、くるりと向き直って私を見下ろした。
「栗ご飯、食いたかったら炊いていいぞ」
うひゃひゃ、嬉しい。 顔が綻ぶ。
「ハハハ、なんて顔して笑ってだよ?食いモンの事でそんな嬉しそうな顔するヤツ見た事ないぞ」
イルカさんはそう言って笑うと私の頭に手を置くと、瞬身で消えた。
何の任務だろう?
どうぞご武運を…
抱擁する間も無く行ってしまったイルカさんに念を送る。

 

夕餉の支度を終えて、さあどうしましょうと思った頃にイルカさんが玄関から帰って来た。
飛びついてお帰りなさいと言いながら、ぎゅっと抱きしめて離れてもう一度ぎゅっとする。
火薬や血の臭いはしていない。
戦闘じゃなかったんだ、よかった。


蒸し栗をスプーンで掬いながらイルカさんが笑う。
他愛の無い話をしながら、焼酎を飲む頬に朱が差す。
炊飯器メロディーを奏でたので、うきうきとキッチンへ。
席に戻って、イルカさんのお茶碗から栗を抜き取って自分のお茶碗に移す。
「何やってんだ?」
「え?イルカさん、混ぜご飯お嫌いでしょう?」
「栗は食えるよ」
拗ねたような口調に少し可哀想になったので、全部は取らずにいてあげる。
「美味しいね」と微笑み合いながら食べたこの日の夕食は、特別に美味しかった。

「じゃあ、私帰ります。残った栗、生のまま置いてますからまた蒸して食べてください。
あと、ワインで甘く煮たのが冷蔵庫にありますから、食べてくださいね」
一人で帰る心算で玄関先でそう言って、丁寧に断ったのに何度も送って行くよと
熱心に申し出てくれたので、途中まで送って貰うことにした。
言葉少なに、繋いだ手がぶらぶら揺れる。
乾いた空気が冷え始めている。
そっと肩に腕を回して、抱き寄せられた瞬間に頬に触れた手が温かい。
「え、と…今日は悪かったな。折角来てくれたのに、呼び出しで独りにしちまって」
見上げると、ちらと私を見た後、また真っ直ぐに前を向いて肩を抱く手に力が加わった。
「こ、今度、今度来る時は休みの前の晩から来いよ。その方がゆっくりできるから」
切羽詰ったような声に吃驚してもう一度見上げると、
イルカさんは真っ赤な顔でやたらと瞬きしながら鼻疵をポリっと掻いた。

強い皮に包まれていても中身はほくほくで甘い甘い栗は、なんだかイルカさんに似ている。
変な蟲がつかないように気をつけなくちゃ。


 



 



 


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