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ほどける [SS]

本日の妄想:イルカ先生は固結びした紐を解くのが上手い。
の妄想駄文


 

 

 

 

        ーほどけるー

 

「怪我人が多いから夜が明けてから帰還しよう」
指揮官の言葉がとても遠くで聞こえたように思う。

忍は皆、左側を下にして眠るのが常だ。
今夜みたいな日は、縮こまって両手で自分を抱きしめるようにして横たわる。
小さく固くなって眼を閉じても、眠気はやって来ない。


二度目のAランク任務だった。
仲間とはぐれ、忍具は底を尽きかけて、敵の殺気が毛穴から入り込む。
怖かった。
初めて怖いと思った。
暗部が来てくれなかったら、私は灰になっていただろう。
タンパク質が焦げる臭いが鼻について取れない。
涙が出る。
情けない 忍なのに。


里に帰ってからも手足を伸ばして眠ることが出来なかった。
小さく小さく、まるで胎児のように丸まって眠る。

 

イルカさんの腕の中でさえそうだった。
「なんだ? そんな格好で寝て、肩凝んないのか?」
最初、イルカさんはそう言って笑ったが、次第に心配顔に変わっていった。

「ちょっと、こっち来い」
食事の後、ぶっきら棒に手招きされた。
壁に凭れたイルカさんの元へ這っていくと手首を掴まれて引き寄せられると
腰に腕を回して、そのまま脚の間に収められた。
ぎゅっと力を込めて両腕で抱え込まれると、自然と全体重を預けることになる。
背中からゆっくりとイルカさんの体温が伝わってくる。
暫くそのままで、私の呼吸に合わせてくれる。
鼓動までも同じリズムで刻むようにコントロールしてくれる。
ゆっくりと、なにかがほどけていく感じがした。

「大丈夫。怖がるな。お前は生きて帰って来たんだから」
私の肩に顎を乗せたイルカさんが小さな声で諭すようにそう言った。
ゆっくりと首を回してイルカさんを見ると、鼻疵のすぐ上で真面目そうな大きな黒い瞳いっぱいに
泣き出しそうな自分の顔が映っていた。
「そんな顔、すんな。お前は笑ってろ。笑って生きてろ。怖がることはない」
いつもより低めの声が鼓膜のすぐ傍で響く。
何故かとてもほっとして、笑みがこぼれた。
途端に背中に感じていた鼓動が私のリズムとずれて早まる。
「うん、そう。そうだ。笑ってろ」
イルカさんも笑っている。
固くなった心は笑ってほぐすのが一番みたい。
ほどけた心は自然と素直になる。
「ありがとう、イルカさん。大好き」
イルカさんの手の甲を撫でながら、小さな声で呟いた。

 


 

 

 


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