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古疵 [SS]

本日の妄想:イルカ先生には古傷がいっぱい。 忍者ですものね。
だから湯治がお好きなのよ。
の妄想駄文 疵って見えるトコだけじゃないよ・・・・・

 

 

        ―古疵―

 

一番古くて目立つのは、高い鼻梁に横一文字の疵。

一番大きなのは、背中にあるバツ印に似た疵。

一番可愛いのは、朝の髭剃りを失敗した小さな疵。

一番新しいのは、アカデミー生の火遁失敗のとばっちり火傷。

一番隠したいのは、失恋の疵。

一番深いのは・・・・・

 

十月十日が近づくと、イルカさんは普段より朗らかに振舞うように思う。
毎年、里で行われる慰霊祭の準備に人々の顔色が曇るのに、イルカさんはいつも通り
溌剌としているので、そう見えるだけなのかも知れないけど。

「今度の休み、松茸狩に連れてってやろうか?」
夕食に使うしめじの石づきを切る私を後ろからふんわり抱きしめて、
イイコトを思いついただろう と言わんばかりに、少し誇らしげにそうに言った。

「季節の変わり目だからな、風邪ひくぞ。 あったかくしないとな」
月が綺麗な夜だから独りで外にいると、羽織らせてくれた上着ごと揺すぶって頬を擦り付ける。

この季節、昼間は汗ばむほどの陽気でも、日が暮れると少し冷える。
夕暮れより遅い時間に一緒に居られる時には必ずといっていいほど、
何か言いながら肌を寄せて来るイルカさん。

―― 心細い?  秋の夜長は人恋しい?

大丈夫。
私が居る。

背後に近づくイルカさんが私に触れるより先にくるりと向き直って、じっと見上げる。
背伸びして、腕を思い切り伸ばして
結わえられた頭ごと 力尽くでこの胸に抱き締める。
聞こえるでしょう? 私の心音。
こんなにも貴方のことが好きだと叫んでる。
苦しいよと笑いながら文句を言うイルカさんの頭が胸から遠ざかり、いつも通りに抱き合った。
温かさにほっとする。
擂り合う頬の髭が少し痛いけど、このままでいよう。
「秋はふたりがいいね」
小さな声でそう言ったら、イルカさんは照れたような笑みを浮かべながら頷いた。
だから、もう大丈夫。
一番深い疵は、無くならないけど痛まないよう、傍にいるよ。

 






 

 


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