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火花 イルカサイド [SS]

7月20日の駄文 花火 のイルカ視点の駄文です。
大名夫人マダムシジミの御母堂のお気に入りはイルカ先生とゲンマ特上 って妄想付き(笑)

 

 

        ー火花 イルカサイドー

どーんという大音響の中、きっと楽しみにしてたんだろうと思うと少し可哀想になる。
大きな団扇で汗まみれの従者が風を送る。
今夜の護衛任務の指名主マダムシジミの御母堂がオレの手を握って放さない。
高齢なのに子供のように柔らかなままの皮膚は、我々と身分が違うという事を如実に伝える。
花火大会も終盤に差し掛かり、三尺玉が連発されると、
御母堂は感嘆の声を上げながらオレに笑顔を向ける。
罪のない、汚れを知らないまま年を重ねた笑顔だ。
苦労知らずのその手が握るものは、里の子供に人の殺め方を教えている手だというのに。
「イルカのお蔭で楽しかったわ。来週はお買い物の予定があるの。
孫娘が異国へ遊びに行くので服を買ってやらないとね。また、お願いね」
オレは笑みを浮かべると黙礼し、御母堂が椅子から立ち上がるのを手伝い、籠に乗せた。
人夫が御簾を下ろしてゆっくりと担ぎ上げる。
一緒に居たゲンマ特上と礼をしたまま見送った。
屋敷へ到着するまで、影のように暗部が護衛を担う。
「はー、お偉いさんの機嫌取りは儲かっけど退屈だな。ど?いっぱいやる?」
「いいっすね」
楊枝を揺らす色男と共に居酒屋でジョッキを酌み交わす。
仕事のあとの一杯ほど旨いものはないってこと、大名一族は知らないだろう。

 

次の日は一日中火影様の手伝いで、火影邸をあとにしたのが8時過ぎだった。
思ったより早く帰れることを嬉しく感じるのはきっと彼女が出来た所為だ。
今までのオレだったら、探してでも仕事して、なるべく独りでいる時間を短くしていたように思う。
冷蔵庫になんかあったよなと思い出しながら歩く。
今日は逢えなかったな。
無事に帰って来てるんだろうか?
明朝、受付で逢えるだろうか?
風のない熱帯夜
早くシャワーを浴びちまおう。

ベストと忍服を脱いで、脚絆を外してズボンを脱いで髪を解いたところで、ドアがノックされた。
慌ててズボンだけはき直して玄関に出て吃驚した。
彼女が浴衣を着て頬を上気させて立っている。
上気っていうんじゃないな、あんな顔見たことない。
見た事のないような色っぽい表情でオレをじっと見るから恥ずかしくなって、
平常心を装いながらお帰りと労った。
花火をしようなんて言う。
余程昨日の花火大会に行きたかったんだなと思う。
持ってきた豆腐と梅酒を冷蔵庫にしまうと、家から少し離れた空き地に歩いて行った。

嬉しそうに藁で出来た線香花火を弄ぶ。
指先でくるくる回したり、2本いっぺんに持ったり。
そんなことをするからあっという間に火種が落ちて、残り少なくなっちまう。
最後の一本に火をつけた彼女は、途端に無口になった。
パチパチと火花を散らしていた藁を持つ手が心なしか揺らいでいるように見えたので、
その手を覆うようにして持ってやった。
御母堂とはまったく違う、疵もある働き者の手。
オレンジ色の火花で見え隠れする彼女の凛とした顔に見蕩れちまう。
花火大会のことを残念だったと言ったら、彼女の手がびくんと動いて火種が落ちてしまった。
暗闇の中、自分の心拍数とこおろぎの鳴き声しか聞こえない。
彼女は立ち上がったのでオレも立ち上がると、潤んだ瞳でオレを見上げてくる。
じっと、真剣な眼差しでオレを見るから、もうどうにも我慢がならなくなる。
身を屈めて彼女にくちづけた。
触れるだけのキスだったけど、離れる時には名残惜しくて少し吸っちまったから
ちゅっと小さな音がした。
来年こそは一緒に見たいと思ったからそう伝えると、
「押忍」と彼女が答えた。
妙な返事。
でも彼女らしい。
「飯食ってないんだろ?木の葉丼ならできるから、一緒に食おう。」
彼女が持ってきた梅酒と冷奴もある。
「あ、オレんちエアコンないけど、もう少ししたらいい風が吹いてくるから」
オレの言葉に彼女は嬉しそうに礼を言うのでオレも嬉しくなった。
歩いているうちに思った通り、いい風が吹いてきた。
髪の毛が乱れて鬱陶しいので掻き上げると、彼女がまたあの表情でオレを見る。
「…ちゃんと送ってくから、な?」
「お、押忍」
家に入る前、自戒するようにそう告げたら、彼女の方もそのような意味の返事をした。
あっついな、もっと風が強く吹けばいいのにと思った。




                         花火大会の次は我慢大会、頑張れイルカ先生(笑)

 

 

 


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