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野営 [SS]

 本日の妄想:イルカ先生は水泳上手。 ドルフィンだもんね♪  の駄文
あんまり泳いでないけどね(笑)


 

 

         ー野営ー

  

毎年、アカデミーではこの時期に川原で野営演習がある。

魚を捕らえる方法とその調理法に始まり、石の形で流れを読む方法やそこに住む生き物の利用法など、他にも水辺で起こりうる事柄を想定して、実際に経験する為の演習だ。

梅雨が明けたばかりの河川は、水量が増え流れが速く危険を伴う。


教師達は心を鬼にして、アカデミー年長クラスの子供を川へ突き飛ばす。
今回が教師生活初の演習の私も「ごめんね」と心の中で謝りながら、子供を突き飛ばした。

対岸では他の先生と同様に、憧れのイルカ先生も眼を光らせている。
この時ばかりはいつもの朗らかさは微塵も感じさせずに、
子供たちが自力でチャクラをコントロールする様を見守っていた。

子供たちの反応は実に多種多様。
殆どの子が一度沈んでから浮き上がって、チャクラを溜めた足の裏で水面に立つ。
機敏な子なら空中で回転して、水没することもなく涼しい顔で水面に立てる。
一方、臆病過ぎたり動きが緩慢な子供は流れに呑まれて、なかなか浮き上がって来れない。
泳げても泳がずにチャクラを使って浮上するのは、アカデミー生にとっては大変な苦労だろう。


イルカ先生はそういった子供たちを冷静に見守っていた。
こういう顔のイルカ先生を見るのは初めてだった。
きっと、戦地ではもっと厳しい顔になるんだろうと想像できる顔だ。
 

空気の振動を感じた次の瞬間、小さな飛沫を立ててイルカ先生が水面下に消えた。
何が起こったかわからなかったけど、眼を凝らす間もなく、溺れかけた女の子を
抱えたイルカ先生が水面を歩く。

助け上げた子供に救命処置を施すイルカ先生は、異国のライフセイバーのように頼もしかった。
咳き込み、水を吐いた子供はわあわあ泣き出して、イルカ先生にしがみつく。

「泣くんじゃない。そんな事じゃ皆と一緒に卒業できないぞ。
もっと集中してチャクラを練れば、きっと大丈夫だから。もう一回トライしろ」

厳しい口調の中に優しさが滲み出る。

泣き止んだ子供は、頷くとエイ!という気合と共に背面から川に飛び込んだ。


確かあの女の子は、忍者の家系では無い裕福な家の子で、少し高慢なところがある子だった。
私のサンダルを見て、古くて貧乏臭いと馬鹿にしたこともある。

じっと見守っていると泡が沢山浮かんでも、本人は浮かんでこない。

イルカ先生がまた飛び込んだ。

 

「鼻に水が入ったあ!」
助け上げられた子は真っ赤な顔でそう言って、怒っているようだった。

イルカ先生は首を振る。

「鼻に水が入った?溺れたら鼻どころか肺や腹まで水浸しだぞ。
そうならない為の演習じゃないか。今頑張れないんなら、もう忍者になるのは諦めるんだな」

そんな言い方しなくても と思うようなきつい言い方だった。

水中でチャクラを練る演習を終えていないのは、この女の子だけになってしまった。
他の子供たちは濡れた服を乾かす方法や暖の取り方などを教わリ始めているのに
この女の子はずっと膝を抱えて泣いていた。


「どうすんだ? 今、頑張るか、諦めるか。自分で決めてみな?」

今度の声にはほんの少し優しさが混じっていた。
キミを信頼しているよ とでも言いたげな口調だった。

「……頑張る」

「そうか。じゃあ頑張ってみろ。落ち着いて力を抜いてチャクラを練るんだ。流れに逆らうなよ」


女の子は頷くとイルカ先生に背中を押して貰って水中に消えた。

暫くすると、少しだけ下流の方から浮かび上がって、満面の笑顔で水面を
こちらに向かって歩いて来た。

 


疲れきって眠る子供たちは、あのあと自分達で捕獲した食料で夕飯を作って食べた。
その顔は日に焼けて、たった一日のことなのに逞しく成長して見える。

 

真夜中、テントの間を、偶然とはいえイルカ先生と見回り出来て嬉しい。
このローテーションを組んでくれたエビス先生に感謝したいくらいだ。

「よし、このテントも異常なし。ちょっと休憩しましょうか?」
そう言ってイルカ先生が微笑んでくれるだけで、私の心拍数に異常が出る。

「お昼の彼女、頑張りましたね」
コーヒーを受け取ってお礼を言った後にそう続けた。
「…ああ」
「素晴らしいご指導でした。イルカ先生は教師のお手本みたいな方だから、尊敬しています」
こんなチャンスは二度とないかもしれないので、不器用ながらも精一杯に私の気持ちを伝えた。
「でも、何年か後で、アタシのファーストキス返してよ! なんて金切り声で叫ばれちまうかな?」

私の言葉に照れたのか、イルカ先生はそう言って白い歯を見せてあははと笑うと、
少し乱暴に薪を火に投入れた。

そんなの嫌です と 綻んだイルカ先生の口元を見て、声に出して言いそうになって少し焦った。
彼女にイルカさんの唇の感触とか残ってるんなら、全部返して欲しい
―― なんて、子供相手に嫉妬する私は、まだまだ未熟な教師です。

 

 

        今年も夏休みが始まります。
        どなた様も、思い出に残る楽しい夏休みをお過ごしになりますように♪

 


       

 

  


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