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天花粉 [SS]

7月4日の妄想:イルカ先生は天花粉の匂いがお好き。 
お風呂上りの項にはたいてあげたいっ。 うきゃあーー!
てんかふん、シッカロール、ベビーパウダー 色んな言い方がありますが、どこか懐かしい匂い。
綿の花の匂いと似ていますね。   の駄文です。

ヒロインとイルカさん視点交互で。 読み難いかな? 


        ー天花粉ー


夏の日は長くて、夜が短すぎる。
夜の任務に就くときには、余計にそう思う。
手際良く、短い時間に片付けなきゃね。
闇に紛れて、とりわけ汚い任務を終わらせる。
朝日が昇る頃には、そんな事も夢だったように振舞って、
朝日みたいな人に会えるように。

 

降り続いていた雨がようやく上がり、梅雨の中休みの一日が始まる。
受付に並ぶ彼女にほっと胸を撫で下ろす。
「ご苦労様」
報告書に押印して、彼女を見つめると恥ずかしそうに視線を泳がす。
暗殺なんて、若い娘には最もキツイと思われる任務を終えた彼女に、心からそう伝えた。
彼女はにっこり微笑むと、小さなメモをこっそりオレに渡した。
大切なメモは、大切なところに仕舞う。
大切な約束が記してあるから。

 

長かった日がゆっくりと暮れてゆく。
雨続きだった所為か、久しぶりに見る夕焼けは、とても綺麗。
イルカさんがもうすぐ来てくれる。
氷を張った桶には冷酒が汗をかいている。
鱧のおとしを、からし酢味噌と梅肉の両方で戴くのは、欲張りかしら。
胡瓜と蛸の酢の物と茄子の田楽。
お腹が空いているようなら枝豆のおこわを出そう。
お昼からいっぱい時間をかけて、お酒が進むようなものを用意したつもりだけど、
イルカさんは気に入ってくれるかしら。
お風呂から上がって天花粉をはたいた肌は、まるで白粉を塗ったよう。
ちょっとは女らしいところも見て欲しいから、襟をぐいっと後ろにすかして浴衣を着た。
夕方になると向きを変える風がベランダから吹き込み、風鈴を鳴らす。
風鈴のあとにドアチャイム。
まだぎこちない「お帰りなさい」の抱擁は、恥ずかしいけど心地好い。

 

出迎えてくれた彼女は、初めて見る浴衣姿だった。
その艶やかさに心拍数が上がる。
それに、彼女からほのかに香るやさしい匂いがいつもより強い。
後れ毛が可愛くカールしてる。
うわっ オレ ヤバイかも。
待機所の簡易シャワーでさっぱりして来たけど、折角貴方の為に用意したんだからと
浴衣に着替えるようにオレに言う彼女は、いつになく淑やかだった。
ベランダにスノコ、その上に座布団を敷いて、浴衣姿のオレたちは酒を酌み交わす。
鱧のおとしには辛口の冷酒がよく合う。
時折、吹く風が心地よい。
涼やかな風鈴の音。
よく笑う彼女、よく喋るオレ。
酌をしてくれる彼女に見蕩れる。
いつもより白い項、上気する頬。
それに ― なんだろう? この香りは? 懐かしいような?
思わず彼女の顎に手を伸ばして、顔を近づける。
彼女が眼を閉じる。
首筋に鼻を近づけて香りを確かめた。
「もうっ! 意地悪ね」
彼女が怒って、オレの鼻を抓んだ。

 


浴衣の前を寛がせて、イルカさんの首筋に天花粉をはたく。
ぱふぱふ ぽんぽんぽん 
粉が宙に舞う。
「……いい匂い。好きだな、この香り。なんでだろ? 懐かしい感じがする」
イルカさんは目を閉じてうっとりとそう言った。
きっと小さな頃、夏のお風呂上りにお母さんがはたいてあげていたんだわ。
私の子供の頃もそうだったもの。
だけど、そうだって事を今は教えてあげない。
天花粉の香りが私の香りになればいいと、そっと願う。
もし、今日中にキスしてくれるなら教えてあげてもいいけど。
どうするの?
夏の夜は短いのよ。

 


 


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