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鉛筆 [SS]

本日の妄想:引き出しシリーズ 
イルカさんのアカデミーの机の引き出しには削れないほど短くなったチビ鉛筆がゴロゴロある。
イルカさんはモノを大切に使う人だと思います。
そして愛着のあるものはポイッっと捨てられない性質かと思います。

     

                   ― 鉛筆 ―

いつも火薬の量を間違えていた男の子がやっと適量を把握できた。
「よく頑張ったな、あとで職員室に来いよ」
イルカはそう言ってその男の子の頭を撫でてやった。

放課後、男の子がやって来た。
「どれでも好きなのを取っていいぞ」
机の引き出しから1センチ位のチビ鉛筆が沢山入った小箱を差し出した。
「うわー!ちっせー、貰っていいの?」
「ああ、いいよ。ご褒美だ」
男の子は目を輝かせてその中から1本選ぶと礼を言って嬉しそうに帰って行った。
こんな風にイルカが受け持つ子供達は皆、苦手な事を克服できるとご褒美の
チビ鉛筆を貰いに職員室を訪ねてくる。

「子供ってミニチュアが好きですよね?」
向かいの席から一部始終を興味深く見ていた新米教師が、頬を染めながらイルカに声をかける。
「え?あ、ああ、そうなんですよ。もう使えないんだから捨ててしまえばいいものを、オレってやっぱ貧乏性なんですかね」
イルカは照れ笑いしながらそう答えた。
「さっきのあの子、嬉しそうでしたよ。イルカ先生に頂いたんだから宝物にするかも知れませんね」
「ハハハハ。そんな、大袈裟な。・・・ただ何かの記念になればいいと思って」

イルカの顔にふと影が浮かんだように見えた。
忍者を育成している教育者だ。
教えているのは攻撃・防御・罠・策略・騙まし討ちや奪い取るといった事ばかりだ。
我々は鉛筆みたいなものなのかも知れない。

「私にも1本分けてくださいませんか?」
新米教師が貰ったのは添削用の赤鉛筆だった。
「ありがとうございます。私の教師生活のお守りにします」
「ええっ?ホント、大袈裟だなあ!」
イルカは快活に笑いながらそう言った。


もうすぐアカデミーの卒業式だ。
小さな鉛筆を貰った若い忍者達が巣立っていく。

 

 


 

 


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