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ハイチュウ [SS]

本日の妄想:イルカさんはキャラメルとかソフトキャンデイが嫌い。

 

 

   -ハイチュウ-

あ、しまった。ホッチキスの針を切らしてしまってたの忘れてた。
この時間に職員室に残っているのはほんの数名で、皆バラバラに座っている。
隣の席のイルカ先生の机に目を遣る。
机の上には無い。引き出しの中よねきっと。
「ちょびっと失礼しまーす」
小声でそう言いながら椅子ごと移動して、そーっと引き出しを開ける。
ドキドキ、緊張するわ・・・トラップ仕掛けてあったりして。まさか、ね。
案外きれいに整頓されている引き出しの中、針はすぐに見つかった。
小さな箱からひとつだけ取り出す。
「すみません、お借りします」と小声で言いながら。
大好きな人がいつも座ってる場所。
いつも使ってる机。
すべてが愛おしく思えて、引き出しを閉める瞬間までその中を目を凝らして見た。
添削用の赤ペン、万年筆、うみのの印鑑、カッター、クリップ、チョーク、なぜか爪切り・・・
雑然としているようでも過不足なく揃っている。
ん?引き出しの一番奥に蓋の無い小箱がある。
何だろ?
閉じかけた引き出しをもう一度引っ張ってみた。
小箱の中には、ハイチュウやキャラメルが入っていた。
へえー!イルカ先生、甘党だったなんて以外だわ。
ひとつ貰ってもいいかな?あとで逢った時に事後承諾ということで・・・
季節限定のライチ味のハイチュウをひとつだけ。
甘酸っぱ~い。美味しいけど歯にくっつくのが難点よね。

受付が終わったイルカ先生が職員室に戻ってきた。
目が合うとにっこり笑ってくれる。
針をお借りしたことだけ話した。
ハイチュウの事は黙っておこう。
だってあんなに奥に隠すように入れてるんだもの、甘党だって事他人に知られたくないのかも。
「じゃ、行こうか。今日は何食べたい?」
「寒いから湯豆腐にしませんか?私の家で」
「いいな、湯豆腐」
イルカ先生は嬉しそうに笑って私の椅子を引いてくれた。

陽は既に落ちていて、気温がうんと下がっていくのが目に見えるように解る。
イルカ先生がずっと手を繋いでくれてるから、左手だけは温かい。
買い物を済ませて狭い路地に入ったところで、不意にイルカ先生が立ち止まった。
見上げると真剣な眼差しで見つめてくる。どうしたのかしら?
深呼吸したあと繋いでいる手を解くと、顎を持ち上げ固定されてくちづけられた。
それはいつものより深く熱の篭ったものだったから、少し膝が震えた。
「・・・やっぱり」
ちゅっと音を立てて唇を離してイルカ先生はがっかりしたように言った。
「ハイチュウ食べたな?」
「・・・はい」
「ダメじゃないか、あんなの食べた後はちゃんと歯磨きしないと虫歯になるぞ」
「・・・・・・・・はい、すみません」
私、なんで謝ってるんだろ?




イルカ先生にちょびっと強引にチュウされたかっただけです、はいちゅう。すみません・・・
同僚から貰ったハイチュウ達、要らんとも言えず捨てる事も出来ず引出しに溜まっていく一方です。

 


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